をご存知だろうか。”VELO”とはラテン語で自転車の意味。まさに自転車タクシー。 新しい街の交通手段として1997年にベルリンで誕生し、 日本ではNPO法人 環境共生都市推進協会 によって2002年に京都で走り始め、その後渋谷や大阪、松本、広島の街で 約60台が走っている。
上の写真は、先日(2004年12月18日)島根県の大社町というところでのワークショップ 『大社まるごと博物館に向けて』での一コマである。 “博物館の情報デザイン”と絡めながら行われたまちづくりワークショップを少し紹介し、 そこにベロタクシーがどう関係しているのかは最後にお話したい。
大社町の名は出雲大社があることから付けられているが、ご存知のとおり、 その出雲大社の歴史は本当に古い。
この地域一体には神話やさまざまな言い伝えの伝承や神楽(かぐら)が多く残るところで有名だ。 また、実際に発見された巨大な束ね柱による 古代高層神殿の謎 なども面白い。さらには、大社周辺の約700年前の絵図が現存しており、 街並みの記録が京都よりも古くから書き残されているなど、地理情報コンテンツとしても 非常に魅力的なところなのだ。
この出雲大社に隣接する場所に、2006年に 島根県立古代出雲歴史博物館が開館する。 これを機に、博物館の展示がこの大社の町全体にも染み出して広がっていくという「大社まるごと博物館」 というコンセプトを実現しようとしている。
地域の人々が地域に根ざした情報を共有・発信することで、 現代においてもさらに面白い場所にしていくことができる。そう信じて、博物館を支援する会、 大社町と教育委員会、島根県教育委員会、島根県中山間地域研究センター、それに古代出雲歴史博物館 の開館を準備する島根県博物館・古代文化センターが主催してのワークショップである。
私たちもこの博物館の情報デザイン、システム設計管理、運営計画策定を担当しており、 スタッフとしてワークショップに参加した。
町を歩いて、探せば
面白いものがたくさんある。特に都会に暮らす私たちには落ち着いた町の風景がほっとする。 このワークショップでは、地元の方を中心とする参加者に GPS付きカメラケータイを持って実際に町を歩いてもらった。 普段「大したもんじゃない」と謙遜しているが、ちょっと自慢できるもの、伝えたいものを写真に撮ってもらい、 Web-GISの地図上にその場で登録。みんなが楽しめる町歩きのための地図が途端にできていくことを 実践し実感した。
ワークショップでは、すでにケータイで 「尾道市どこでも博物館」を成功させ、運営をおこなっている NPO法人プラットフォーム・おのみち代表の徳永修氏からも、 「ここで展開しようとしている仕組みと私たちの”どこ博”は双子ほどに似ている。 是非お互いに連携し合い、地域を盛り上げましょう。」とエールが送られた。 尾道でも観光情報ばかりでなく、地元の人たちのお薦め情報や名店情報などもすでに提供している。 今年のヒット商品は、7箇所の社寺を巡るガイドペーパー「7社シート」(600円)で、1万部売れ、 その波及効果で1泊2日の観光客もかなり誘致できたというのであるから、 情報デザインによる町おこしは面白い。
交通手段としてだけでなく、
コミュニケーションのツールとして、今回京都から搬送し、体験してもらったのが冒頭の「ベロタクシー」。 今年から走り始めた松本では、建設会社が中心となって設立されたNPOが運営している。 ベロタクシーを道や街づくりのヒントが声で聞ける「コミュニケーションの道具」として考えたのだ。 漕ぎ手とお客との間で自然と会話が始まる。ワークショップに参加した大社町の人たちにも非常に関心が高かった。
実はこの夏休みを利用して、私は観光地の町でどれほどベロタクシーに可能性があるのか、松本まで見に行った。 そこで、妻と2歳の息子の3人で乗ってみた。 最高時速11キロに自主規制したゆっくりした移動空間で、すぐにドライバーさんとの楽しい会話が始まった。 息子は今でも時々「ベロタクシー、乗ったねー」と言い、よほど忘れられない楽しい体験だったらしい。 乗っただけで、「環境にやさしい」ことや「ゆっくり町並みを楽しむ」とはどういうものかを直観的に伝えられる。 これも”メディア”だと思ったのだ。
Web-GISによる「まるごと博物館」ガイドシステムのアクセス端末として次世代ケータイPDAを持って町を歩く。 町には昔ながらの店があり、そこに暮らす人が語る話しが楽しい。
あなたの街も情報デザインによって素敵な「博物館」にしませんか。
参照
大社まちづくりワークショップ
『大社まるごと博物館に向けて』
島根県立博物館・古代文化センターのページより
「古代高層神殿の謎」
2006年開館予定の
島根県立古代出雲歴史博物館