イチローの偉業を伝える大リーグ公式サイト

今年の明るい話題の一つといえば、やはりイチローの大リーグシーズン最多安打記録達成は外せない。 カウントダウンの段階に入ると、その日の試合結果が気になり、そこで樹立する記録がどれほど大変なものなのかも知りたくなる。 筆者は、残念ながら仕事があるので落ち着いてテレビ観戦という訳にはいかない。そこで、ここでもインターネットに頼ることになる。

なかなか楽しめる大リーグ公式サイト

最初は新聞社がネット上で配信する簡単なニュースを読む程度であったが、英語で読むことを苦に しないならば、MLB公式ウェブ・サイト<MLB.com> にアクセスする方が楽しめる。

同サイトでアクセスできる情報は様々だ。プレーヤ別の詳細な個人統計データ、試合の概要、 包括的な歴史データ、野球ゲーム、各試合の生中継および録音音声、試合全体の生中継および録画ウェブ放送、すべての投球内容、 試合終了後のハイライト映像等々である。有償サービスに加入しなくても、イチローの試合結果、やや詳しい過去の記録を読むだけ で十分に楽しめた。

プレーヤのブランド価値が見えない資産

今年の場合、もはやマリナーズの試合結果には関心がない。ところが、<MLB.com>の良いところは、 興味の対象が個々のプレーヤに限っても、豊富な統計データと映像コンテンツでそのプレーヤの凄さなりを十分に満喫できる作り になっているところだろう。このサイトを通じてお隣の韓国では随分とイチローファンが増えたという話だ。 試合の勝ち負けだけが前面に出てくる傾向がある日本のプロ野球関連のサイトとはやや設計思想が異なるようだ。

こうした違いはどこから出てくるのだろうか。 やや誇張して言うと、プレーヤのブランド価値を重視する大リーグというプロスポーツビジネスの経営戦略による所が大きいように 思う。プレーヤが素晴らしいプレーをし、記録を作り、またその瞬間を観客と共有することで プレーヤのブランド価値は強化される。記録が塗り替えられる度に、過去のプレーヤのブランドと新たなプレーヤの ブランドが結合しさらに価値の強化が図られる。こうしたブランド価値の集積が、膨大な集客力やキャラクターグッズの購買力を 引き出す「見えない資産」になっているのが、大リーグビジネスの強みである。<MLB.com>は、この見えない資産である プレーヤのブランド価値を強化し、海外まで浸透させる有力なツールとして意図さえているのではないだろうか。

見えない資産を強化するシステム戦略

我々は、企業がシステム戦略を構築する際には、この「見えない資産」を強化するという視点でシステム要件を検討するプロセスを 組み込むべきだと考えている。そこでポイントは2つある。

第一に、「見えない資産」を正しく識別することである。これが正しく認識できていない場合には、例えば企業は、シナジー効果を 生まない「見えない資産」をもつ企業同士の合併によってお互いの資産価値を毀損する、といった誤りをおかす。

第二に、「見えない資産」を創出、蓄積し、収益に転換する仕掛け(プロセス)を設計することである。この プロセスのなかでITがどのように活かせるかを検討する。頭からITを活用することだけを考えないことがポイントである。 ITだけでできることは実は思いのほか少ないからだ。

ただし、すでにITを活用したバーチャネルな所でビジネスモデルを構築している企業の場合、こうした「見えない資産」をレバレッジ とするシステム戦略は描きやすいかもしれない。新たにプロ野球ビジネスに参入を目指すネットビジネス企業への期待感は大きい。