電源もユビキタスに

無線通信ネットワークは整備されつつあるので、通信速度はともかく、 ほぼどこでもつながるようになってきている。 ユビキタスコンピューティング環境の基盤である「どこでもネットワーク」 は実現されつつあるとも言える。 通信インフラの拡充に合わせて、 ケータイをはじめとするユーザ側の端末の機能も進化している。 ただし、当然のことながら、 ユーザ端末の機能はすべて電源があってこその機能だ。 ユビキタスネットワークに対して、どこにでもありそう、 あるいは、 目の前にあるのに意外と簡単には手に入らないのが電源ではないだろうか。

小型ACアダプタはあっても

我々が手にするほぼすべての機器類は直流で動作する。 御存じの通り、通常家庭用電源といえば100Vの交流だ。 そこで何らかの方法で交流を直流に変換する方法が必要だ。 各家庭には数個は見かける黒いACアダプタは、 電圧と電流に違いでさまざまな仕様のものがある。 コネクタの形状は数種類しかなく、間違えて差し込んでしまう可能性も高い。 ACアダプタが目の前にたくさんあっても、 使えないものばかりという状況は当分改善されそうにない。 実際には出力電圧が近ければ動作してしまうことも多いが、 負荷がかかると動作不良になったり寿命が短くなる可能性もある。 実際にはかなりの熱が発生する上に、ACアダプタの不良で回収交換されているケースも多く、注意が必要だ。 コスト削減の意味を含めて、仕様を3種類ぐらいに共通化した上で、 小型軽量化の改善を図ってもらいたいものである。

2次電池はリチウムイオン主流だけども

ケータイやデジカメ、ノートPCなど、 持ち歩く情報機器には充電可能な2次電池が必要不可欠だ。 通常使われているのは、メモリ効果がない高密度なリチウムイオン電池である。 リチウムイオン電池は単体電圧が約3.6Vなので、 通常の電池とは互換性がないこともあり、 機種ごとに形状の異なる電池が使われている。

小型化を図るためとはいえ、これはあまり嬉しくない。 特にデジカメの場合、単3型または単4型の電池にしてはダメなのだろうか。 予備の充電池もニカド(Ni-Cd)やニッケル水素(Ni-MH)ならば、安価で購入可能だし、 電池切れでも乾電池を入手すればとりあえず利用可能になるという利点もある。 あるいは、もっと安価に予備バッテリを販売してくれればありがたい。

勝手に借りるのはダメ

ノートPCの場合大容量バッテリであっても、1日以上持たせるのは難しい。 特に無線LANやPHS等で通信をすると、電力消費もかなり多くなる。 そこで、やはり100Vの電源が欲しくなる。 しかし、外で100V電源を確保するのは意外と苦労する。 公共施設に限らず、喫茶店でも勝手に目の前にあるコンセントを使うことは窃盗に問われるリスクもある。

また、長時間の移動時こそ電源が欲しいと思う時もある。 新型の新幹線(東海道山陽新幹線の700系や東北新幹線のMAXなど)には用意され ているので、1列目か最後列の席(オフィスシートというそうだ)を指定しよう。 ただし、飛行機の場合は、 ビジネスクラス以上でないと電源を確保するのは難しそうだ。

コンビニ等ではケータイを充電可能なサービスはあるのだから、 ノートPC用充電機器や10分間電源を貸してくれるサービスがあってもおかしくない。

究極のユビキタス電源は

このように目の前に電源があってもさまざまな要因で使えないことが多い。 電源に関して言えば、ユビキタスな状況が実現されているとは言いがたい。 そこで、電源の将来像について考えてみる。

バッテリによる駆動時間を増やすために、どの機器でも低消費電力化が進んでいる。 そのため、消費電力分を他から与えられることができれば、 充電などの心配もなくなる。 例えば、太陽光振動による電力供給は小型な機器では実現している。 今後、機器を構成する個々の微小デバイスに発電機能を付けることで、 機器全体の無電源化することなども考えられる。

また、燃料電池の実用化も進んでおり、 2004年中には各社から製品化される可能性が高い。 しかしながら、毎回新品バッテリを買うような手間やコストでは、 長時間持つとしても敬遠されてしまう。 通常の充電コストよりも安くなるようでないと普及は難しい。

ネットワークが無線化されたように、電源もコネクタによる接続をやめて、 無線による電力供給をしてくれる万能型基地局があるといい。 このようなものがあればACアダプタの違いやコンセント問題も解決される。 実際、電磁誘導による電力供給は、 PHSや電動歯ブラシや電動カミソリなどの充電器に使われている。 さらには、 より広い範囲に電力を供給できる可能性を持つマイクロ波送電技術を応用して、 いわば「パワースポット」が早く実現されて欲しいものだ。