俗にMP3プレイヤーとも呼ばれるデジタルオーディオプレイヤーに続いて、 最近は映像も楽しめるポータブルムービープレイヤーが続々と登場している。 このようなモバイル製品が使えるようになるのはうれしい限りだが、 果たして実際に使ってみたい製品と言えるものなのだろうか?
楽しめるようにはなったが満足はできない
実は携帯型のムービープレイヤー自体は特に新しいものではない。 以前からメモリカードを利用した製品は数多く出ており、 専用プレイヤーでなくても、 数年前のPDAやここ1年くらいの携帯電話なら映像を見られるようになっている。 しかし、メモリカードの容量が足りなかったり、 見られる映像が10〜15fpsとフルフレーム(30fps)でなかったため、 多少は見られるという程度で長時間楽しめるものではなかった。
ここに来て、本当に楽しめる製品が出てきた背景には、 小型かつ大容量のハードディスクの開発と、 映像をムービーファイルとして手軽に扱えるようになったことが大きい。 家庭用のハードディスク内蔵レコーダーやPC用のTVキャプチャーカードにより、 テレビ番組の予約録画やそのデジタル化は、以前に比べて格段に手間がかからなくなった。 そのようにして録り貯めたテレビ番組を自宅でゆっくり見る時間が無い人にとっては、 まさに願ってもない製品と言えるだろう。
私自身も見たいと思う映像(ムービーファイル)がたくさんあるのだが、 そのようなプレイヤーで通勤中に見たいかと聞かれれば、その答えはNOである。 それは画面が小さいことに尽きる。 たかだか3〜4インチの小さな画面では、 スポーツや映画などはとても満足できないからだ。 また、乗り換えなしで1時間以上通勤する人にはゆっくり見ていられるとしても、 そもそも通勤時間が短い人や乗り換えが多い人、 混んでいてそれどころではない人には落ち着いて見られないという問題もある。 視覚と聴覚の両方が奪われてしまうという状況も、 ここ最近の物騒な世の中ではやや抵抗がある。
見るのではなく編集をしたい
他に何ができればこのようなプレイヤーが欲しいかと考えたとき、 思いつくのは映像の簡易編集である。 テロップ挿入やアフレコのような複雑な編集は難しいとしても、 CMカットやチャプター設定程度ならばあの小さな画面でも十分可能だろう。 プレイヤーの内蔵ハードディスクに保存したMPEG2ファイルやAVIファイルに対して、 このような簡易編集を行い、その編集指示ファイルだけを自宅のPCにコピーすれば、 自宅で編集することなくそのままDVDメディアに保存できるようになる。
私自身、録り貯めたテレビ番組を自宅のPCで編集し、 それらをDVD-Rに保存する作業を繰り返しているが、 編集作業に時間を取られるあまり、 せっかく保存した映像を見られないという事態に陥りつつある。 私の友人は、そのためにこのようなプレイヤーを買って使っているらしいが、 やはり映像は大画面で見た方が満足できるのだから、 つまらない編集作業は外で済ませ、観賞は自宅の大画面テレビでゆっくりしたいところだ。
編集してまで保存したり大画面で見たいと思うテレビ番組がないという方には、 撮りっぱなしとなっている我が子の成長記録を整理するのはいかがだろうか。 DVテープからキャプチャしてムービーファイルに変換する手間は必要だが、 一度変換してしまえば同様に外出中でも編集できるようになる。 将来的にはハードディスク搭載ビデオカメラになり、 DVD搭載ビデオカメラのようにカメラ本体での簡易編集もできるようになるだろうが、 それまでの間は貯まる一方のDVテープをなんとか整理したいはずと思うのだが。
さらに欲を出せば、映像の編集だけではなく、 普段使っているPC本体のファイル整理もできれば便利である。 いくら大容量のハードディスクとファイル検索機能があるとはいえ、 大量のメールや添付ファイル、関連資料などですぐにファイル管理が立ち行かなくなる。 そうなる前にこまめに整理すれば、あるいはポータルサイトで一元管理すれば良いのだろうが、なかなかそうも行かないというのは言い訳だろうか。
見るだけで生き残るのは難しくないか
車内で周りを見渡してみると、今や半分近くの人が携帯電話でメールやWEB参照やゲームをしている光景も珍しくない。 ここ1、2年の間には登場するであろう 超小型ハードディスクを搭載した携帯電話や、 PSPのような高性能ポータブルゲーム機でも映像を楽しめるようになるに違いない。 一方、通常のバッテリで長時間使えるようになっている最近の小型ノートPCであれば、 座れるという条件付きだが、より大画面で映像を楽しめるようになっている。
もちろん単機能の専用機の方が多機能の汎用機よりも使いやすく優れている場合が多く、 現在のポータブルムービープレイヤーもそうなっていると思う。 ただ見られるだけというのでは、2年後には携帯電話やゲーム機、 あるいはノートPCやPDAにその座を奪われてしまいかねない。 より多くの人に長く使ってもらえるようになるには、単に見るだけでなく、 編集機能やテレビ視聴などプラスアルファの機能が必要ではないだろうか。
- ハードディスク内蔵/接続可能なポータブルムービープレイヤー
- 超小型ハードディスク
- SONY PSP