社内メールボムにご用心

メールボム(爆弾):メールサーバのダウンやメールボックスの容量オーバーを狙って大量のメールを送りつける悪質な行為。

これまでは外部からの脅威だと思われていたメールボムだが、最近では発生源が社内であるケースを多く耳にするようになってきた。そして意外にも、多くの場合は悪意を持って故意に攻撃されるわけではないのである。

メールを使うシステム

いわゆる「情報系」と呼ばれる社内システムの多くはwebやメールなどの技術を取り込んだものが多くなってきており、特にワークフローを扱うシステム、パッケージにはメールをユーザへの通知手段として用いるものが多い。

メールをシステムの一部に取り込むことは必然の流れである。メールは今や内線電話以上に必要不可欠な通信ツールであり、まだ抵抗は残りつつも管理職への浸透も進んでいる。ほとんどの社員は朝一番にPCを立ち上げたらまず最初にメールチェックをするのではないだろうか。システム設計者の立場とすれば、ユーザへ情報をプッシュする数少ない手段がメールであり、情報系システムとの親和性も非常に高いとくれば、利用しない手はない。

しかし、メールをシステムに取り入れる場合、注意して設計しなければメールボムマシンと化してしまうのである。

メール爆弾

とあるwebサイトコンテンツ作成支援システムで実際に起こったことである。そのシステムではコンテンツ作成、査読、承認、アップロードを行う度にそのステータスを担当者および管理者にメールする仕掛けになっていた。設計時点でメールの洪水が発生しないよう留意していたが、実運用に入り、想定以上の大量のコンテンツ登録が発生し、しかもアップロードを急いだため多くのステータス遷移が短期間に発生し、結果的に大量のメールがユーザ(特に管理者)を襲った。複数の部署を掛け持つ管理者や管理者代行を行っていた担当者などはこのシステムからのメールだけで1日100通を優に超え、通常業務が麻痺してしまった。

そうでなくても複数のシステムが思い思いにメールをユーザに投げかける現状に加え、社内外のメーリングリスト、情報メール、日々増加(高度化)傾向にあるスパム、添付ファイルの増加等、ユーザのメールボックスには日々大量のメールが流れ込んでいる。ユーザは懸命に振り分け機能、ローカルスパムフィルタ等を駆使してメールトラフィックの交通整理を試みてはいるが、スパムと戦っている時間は増えても「以前ほどゆっくりとメールの内容に目を通す時間がない」、と感じている人が大多数ではないか。

メールを扱うシステムの心得

では、社内システムがメールボムの発生源にならないようにするにはどうしたらいいのか。

1.一つのシステムから出力されるメール量を減らす
メールにてユーザへ告知するにしても、内容を極力まとめることが重要である。原則、1日に1通/ユーザとして、その日のダイジェスト情報を送るようにする、などの工夫が必要である。形骸化されているメールを削減していく努力も必要である。

2.他の通知手段を活用する
メールにはwebサイトへのリンクのみ記述し、詳細はwebサイト上で表示する。あるいはメールによる通知を一切やめ、メールチェックと同等にチェックするポータルサイトを作る。そのポータルサイトはユーザが必要とする情報のみをセレクトして掲載(パーソナライズ)されていることが望ましい。

3.メーリングリスト(ML)の乱立を抑制する
システムを構築するまでもなく、手軽にグループ内のコミュニケーションを図れる仕掛けとして便利なMLであるが、これもメールトラフィックの増大に加担している。メンバー全員に通知する必要のない議論であれば掲示板などで行うことも考えられる。

メールを扱うシステムの設計には細心の注意が必要である。下手な設計を行ってメールボムでシステムをダウンさせたりでもしたら、「メールボマー」との不名誉なあだ名がついてしまうかも。用心、用心。