時代遅れメディアの移行作業

情報を記録するメディアは時代とともに移り変わってゆく。音楽ならばレ コード(SP, LP)に始まってオープンリール、カセットテープ、MD、CD-Rなど。 映像ならば 8mmフィルム、VHS、β、Hi-8、DV、DVDなどがある。コンピュータ 用のデータ格納用メディアとしても、フロッピーディスク(8インチ、5インチ、 3.5インチ)にはじまり、MO、CD-R, DVD-R などがメジャーなところだ。これに PD, SuperDisk, ZIP, JAZZ などの今となってはマイナーなものやテープメディ アにまで言及すると、果たしてどれほどの種類があったのかも定かではない。 今回は、これらの時代遅れになってしまったメディアの情報移行の話をしよう。

個人にできることの限界

個人的な話で恐縮だが、筆者は最近やっとすべてのフロッピーディスク(8 インチ/5インチ/3.5インチ)を廃棄できた。内容を要るものと要らないものに 仕分けをして、要るものだけをパソコンに取り込んでから CD-R に焼いたわけ だ。

こうした古いメディアの移行作業は、量が少なければ個人で何とかなるが、 量が多くなるとあまりに多くの時間がかかるために途方に暮れることになる。 筆者の場合、大量に保有している音楽のカセットテープがまさにその好例で、 現在途方に暮れつつも地道な努力を続けている。

以前は家の中でも車でも、歩きながらでもカセットテープで音楽が聴けた。 しかしそれらのカセットテープ用機材は壊れるか別の新しい機材に交換されて しまい、今ではラジカセ1台が唯一のカセットテープ再生機となってしまった。

そこで、カセットテープの中身を MP3 等の形式に変換してハードディスク か DVD に保存することを画策した。しかし、このダビング作業を個人でやろ うとすると、所有するカセットテープの実時間分は最低限かかるため、所有す るカセットテープの本数から考えると自分でやるのはかなり困難だ。そうなる とやはり専門業者に任せるしかない。しかし、カセットテープ1本あたり 1,500円程度はかかるようだ。カセットテープが100本もあれば、個人が払う金 額としてはかなり高価になってしまう。

新メディア登場=旧メディアが時代遅れに

新しいメディアは旧メディアと比べて大容量・高速・低価格で登場するた め、世の流れとしてそちらに移行してゆく。時代遅れのメディアも、それを読 み取れる機材がいつまでも健在であれば、無理して新しいメディアにコピーす る必要はない。しかし機材が身近に1台きりになったりすると、急に心細くなっ てくる。私のオフィスを見回してみると、8インチ、5インチのフロッピードラ イブは1台も残っていない。一頃はやった ZIP や JAZZ ドライブももはや無い。 データバックアップの主力として使っていた DAT ドライブも今は DLT に置き 換わりつつあり、手元には1台しか残っていない。

そこでどうしても時代遅れメディアから新メディアへの移行が必要になる が、このコスト(作業時間)がバカにならない。最近は音声や動画など、情報量 自体がとても増えているため、単純なコピーだけでも時間がかかるし、仮にそ れを人手で取捨選択するとなると、いったいどれだけの時間がかかってしまう のか考えるだにおそろしい。

移行サイクルをなるべく長くするために

旧メディアから新メディアへの移行は、技術が進歩し大容量化・高性能化 が追求される限り、決して避けて通れない道だ。それならばその移行サイクル をなるべく長くする努力が必要だ。

そのためには情報を残すメディアの選択を上手にすることが求められるが、 これが意外と難しい。その時代の技術とコストを天秤にかけていろいろと悩み ながら選択するわけだが、技術革新の方向性は、筆者の感覚ではせいぜい3年 程度しか読めない。これぞと思って選んだメディアが、5年後には使い物にな らなくなっているということは十分あり得る。

現在筆者がもっとも注目しているのは、NAS などのネットワークストレー ジだ。ハードディスクドライブ+LANという組み合わせは、今現在では万能の ように思えるが、格納すべき情報量が今よりも巨大になった場合にネットワー クが耐えきれるのか、果たしていつまで LAN が今の形態で居続けるのかなど、 興味が尽きない。