どうなる勘定系のオープン化

オープン化に踏み切る銀行

最近は、企業の基幹系でも徐々にオープン化が進んでいるが、 信頼性を確保しながら大量の事務処理をこなさなければならない銀行の勘定系は、 最後までメインフレームの牙城になるだろう考えられている分野である。 こうしたなか、三重県の地方銀行である 百五銀行は、 2007年をメドに勘定系システムをWindowsサーバによる全面オープン化に踏み切ることを発表した。 すでに、東京都の八千代銀行も、NECが提供するUNIXサーバーによる勘定系システム 「BankingWeb21」を 今年の5月に本格稼動させている。こうした勘定系オープン化の流れは、今後、本格化していくことになるのだろうか。

流れはオープン化

客観的に見れば、流れはオープン化に向かっている。 オープン系サーバの課題とされる信頼性や可用性も、完全ではないがメインフレームをキャッチアップしつつある。 先行組の実績を確かめるように、最近では、メインフレームユーザの多くが次期基幹システムをオープン系サーバに移行させることを考えているようだ。 市場の縮小が避けられないとなると、メインフレームに高い価格性能のアップを期待するのは難しい。 新たな収益基盤を見出せず、厳しい物件費削減に迫られる地方銀行等にとって、 いずれ、高止まりするメインフレームの負担感が限界に達することは想像に難くない。

リスクテイクし難い銀行側の事情

しかし、実際の所、次期勘定系の構築方針を決定するために銀行の方と議論をしていると、 このオープン化がなかなか現実的な代替案になってこなかったのも事実だ。

第一に、機能拡張が容易であるというオープン化のメリットを十分に活かし切れるほど、 勘定系のコア部分の機能拡張ニーズが出てくるかどうかが見え難い、という議論がある。 当面、基本的に預貸業務を行う銀行に劇的な商品アイディアを想定しにくく、 また、顧客管理や周辺システムとの連携であれば、コア部分にあえて手を入れるような作り方をする必要もない。

第二に、こちらが主要な理由なのだが、システム全体に対するコストの不確定リスクを読みきれないことである。 オープン系によって複数のプラットフォームを組み合わせるとなると、どうしてもその相性の問題が起る。 検証データを積み重ねれば、全体として要求品質をクリアするシステムは組み上がるのだろうが、 組合せ的に問題を解決していくとなると、どの程度のコストで収まるかが見えない。 いずれベンダがこのコストを負担しきれずに、ユーザ側に転嫁するのではないか、という不確定リスクを無視する訳にはいかない。 収益拡大が十分に見込めず、こうした技術的な問題をある程度自行内で解決できるような体制がない殆どの地方銀行には、 こうしたリスクテイクを積極的に奨め難い。

次の更改では本格的な代替案に

しかし、こうした問題は、オープン勘定系の実績を積上げるなかで、 いずれ着地点を見出していくのではないか、というのが筆者の個人的な見方である。 自由にプラットフォームを選択できるというオープン化のメリットを多少犠牲にして、 実績のあるプラットフォームを優先することはあり得るが、メインフレームに伍し得るような費用対効果を訴求できるようになるだろう。 その間、ベンダはある程度のリスクテイクを余儀なくされるかもしれないが、 その見返りは小さくないはずだ。

勘定系の更改タイミングは約10年と言われる。現在はメインフレームを採用しても、 次回の更改タイミングではオープン勘定系が現実的な代替案となっている可能性は高い。