数年前のネットブームとともに取り沙汰された電子マネー。現在はその単語もあまり聞かれなくなり、もうすっかり廃れたものとして取り扱われている。しかし、本当にそうだろうか。
電子マネーの繁栄と衰退
1990年代の半ばからインターネットブームが始まり、様々なネットビジネスが模索され、電子マネーもほぼ同時期に産声を上げた。時を同じくしてICカードも普及しだして、ネット上の通貨と実世界の通貨のインターフェースとして用いられるようになった。ICカードを用いた電子マネーは様々な公開実験が日本各地で行われ、紙幣と硬貨に加わる新しい貨幣となるかと期待された。
ICカード型の電子マネーの他に、ネット上で閉じた形(ネットワーク型)の電子マネーも考案された。Web上でポイントとして蓄積したものをインターネットショッピングに流用できるようにしたものである。ポイントが通貨単位の小数点以下まで扱えることからマイクロペイメントという手法も編み出され、インターネットの課金方法の救世主と一時は期待されたものである。
しかし、多くの公開実験が終了し、ネットバブルも弾けた後にはほとんどの電子マネーは姿を消した。そしていつの間にか電子マネーの話題も取り上げられることが少なくなっていった。
Edyとは?
21世紀になり、セキュリティ、個人情報流出、ネット犯罪、ウィルスなどの不安要素がネットを取り巻く中、電子マネーはその存在を控えめにしながら、実は普及に向けての地盤を固めていたのである。
電子マネー復活の先鋒を務めるのがEdyである。大々的なキャンペーンなどは行っていないが、幅広いサービスと提携事業の活性化でその裾野を広げている。Edyを簡単に説明すると、基本的にはICカード型電子マネーであり、ICカードにバリューをチャージ(登録)し、買い物のときにバリューを差し引かれる。一種のプリペイドカードとも取れる。しかし、Edyはコンビニなどで設置されている専用端末やPCに接続されたICカードリーダ・ライタでチャージできる。支払いもEdy対応店舗やEdy対応Webサイトで行える。チャージも支払いもリアルとネットで使える柔軟性を備えているのである。クレジットカードとの連携も可能であり、PCを使って自宅でクレジットカードからEdyにバリューチャージが行えると言うのは大変便利なものである。
Edyの戦略
これまでの説明ではEdyがこれまでの電子マネーの概念を覆すほどの画期的なサービスを提供している訳ではない事がわかる。
Edyはアグレッシブな他企業とのサービス提携が特徴なのである。まずはam/pmとの連携で全店でEdyの利用が可能である。次に全日空との提携でANAマイレージカードとのバリューとマイルの交換、そして多くの全日空ホテルでのEdyの利用が可能となった。現在では35都道府県で利用可能な店舗が存在する。
実はもう一点Edyを特徴付ける、視覚と聴覚に訴えるマーケティング戦略がある。電子マネーと言うバーチャルなもののアピールにリアルな光や音を使う。Edyはイメージカラーとしてブルーを採用しているが、Edy端末には青色LEDが使われていて、店舗のレジカウンターでもひときわ目立つ。さらに、Edy利用時には電子音ながら「チャリ〜〜ン」という音が店内に響く。これはEdy対応自販機でも同様である。シンプルな戦略ながら、なかなか効果的である。
Edyの今後
とても手軽で便利なEdyだが、セキュリティに心配がないわけではない。ICカードリーダ・ライタのドライバにセキュリティホールが見つかっているし(現在は対応済み)、ネット上の決済情報がいつクラックされるか分からない。さらに、個人情報・決済情報が漏れる危険性も常に存在する。
しかし、電子マネーの便利さは使い始めると手放せなくなるもの。便利すぎてついつい使い過ぎてしまう心配はあるものの、日本経済のV字回復の起爆剤となり得るだけに、今後の発展を大いに期待したいものである。