IPv6レディロゴプログラム(IPv6 Ready Logo Program)をご存じだろうか。 これは、一定の基準を満たしたIPv6対応製品に対して、ロゴの添付を許可する 認定プログラムである。昨年から準備活動を進めてきたが、先月(9月)から 具体的な認定作業がスタートした。今回はこの認定プログラムを紹介しよう。
IPv6レディロゴプログラムとは
「IPv6レディロゴプログラム」は、IPv6フォーラム(IPv6のプロモーションを目的とした国際組織)が実施している認定プログラムである。世界中のIPv6機器(ハード、ソフト)の相互接続性(インターオペラビリティ)をテストプログラムで確認して、合格したものに全世界共通の “IPv6 Ready” と書かれたロゴを添付することが目的である。
先月(9月)スタートした認定作業(フェーズ1)は、IPv6 の基本機能(コア・プロトコル)に対する認定を目指したものである。ネットワークプロトコルとしての確認になるので、他機種との相互接続性も合格の基準の一つになっている。VoIP(Voice over IP),MIP6(Mobile IPv6)など、より高度な機能への認定作業については、「フェーズ2」として今後の実施が予定されている。
日本でも、TAHIプロジェクトやIPv6普及・高度化推進協議会が中心となり、このロゴ認定プログラムに積極的に貢献している。現在のロゴプログラム議長(チェアマン)は、同協議会の専務理事でもある東大の江崎浩氏が務めている。フェーズ1 で使用されるセルフテストツールは、TAHIプロジェクトによって製作されたものだ。
なぜロゴ認定プログラムが必要か
相互接続性が問題になったケースは、古くはアナログモデム、最近では無線LAN などの例がある。アナログモデムの通信速度が次第に上がっていた頃には、異なるメーカ間ではうまく繋がらないということがよく起こった。無線LANにしても、ワイファイ(Wi-Fi)による認定が普及する前は、アクセスポイントと端末側のメーカが異なると繋がらないというケースもままあった。
このような、「同じ仕様のはずなのに繋がらない」という問題は、技術者の立場からすると起こりうることとして、ある意味その機器の「クセ」と考えて我慢することもままある。しかし、一般の人々はとてもそのようなことには耐えられないだろう。一般消費者が安心してIPv6製品を購入する目安として、ロゴ認定プログラムは必要である。
IPv6の仕様策定は1990年前半から実施されていたが、実際の製品が出始めたのはここ数年のことである。このような新しい技術を実装する場合、仕様を読み違えて製品を作ってしまうことが起こりうる。このような間違いを機器ベンダなどが早期に気がつくという意味でも、ロゴ認定プログラムは必要だろう。
ロゴ認定プログラム実施の難しさ
ロゴ認定プログラムの実施にあたりベンダ非依存性や中立性を保つことは当たり前としても、今回は特に「世界統一の基準」「世界に一つのロゴ」を保つことの難しさを痛感した。米・欧・アジア各国の思惑を差し引いたとしても、文化の違いからくる意見の微妙な食い違いなどは、時間をかけないとなかなか解消できない課題である。議長の強力なリーダシップ無しには、今頃はまだ各国の調整ができずにプログラム実施にこぎつけなかったかもしれない。
ロゴ配布の実作業に関しても、手厚くサポートしようとすると多くの時間とコストが必要になる。世界中から受け付けたテスト結果を審査するには IPv6に熟知したスタッフが必要になる。いま実施しているフェーズ1では「セルフテスト」によって試験結果を送ってもらうことにしているが、今後より高度な試験が必要になると、機器類を持ち込んで試験するためのラボ機能を世界各地に整備しなければならないだろう。
今はIPv6フォーラムを中心に、各国からメンバが寄り合って組織を運営しているが、今後多くのロゴ取得製品が現れることを予想すると、組織の運営方法と資金の調達方法については早晩再考する必要があるかもしれない。しかし、IPv6の普及を願っている筆者としては、うれしい悲鳴といえる。