真のPCリサイクルとは何か

10月1日から、個人向けPCのリサイクル制度が始まろうとしている。 2001年4月から施行された家電リサイクル法(特定家庭用機器再商 品化法)のPC版だろうと単純に考えていたが、実際にはいろいろと 事情が違うようだ。PCの商品特性や、家電製品に比べて予想排出量が 少ないなど、その違いはこちらをご覧頂くとして、今回はPCの有効なリ サイクルについて考えてみたい。

回収されたPCの行方

今回の制度では、メーカ製PCやCRTディスプレイは3000〜4000円 の費用を支払って回収となり、自作PCや周辺機器は概ね各自治体が 粗大ゴミとして回収(あるいは不燃ゴミ)となるようだ。 回収したPCをどうするかは各メーカに委ねられるが、たとえそのま ま再利用可能な本体や部品があったとしても、分類や再利用の手間 を考えると、一括して鉄やアルミなどの原料に再資源化されてしま うケースがほとんどだろう。

エアコン・テレビ(ブラウン管式)・冷蔵庫・洗濯機の家電4品目 では、素人がこれらを分解して部品として再利用するのは難しく、 そもそも危険であるが、PCの場合はそれほどではない。さらに、例 えばフロッピーディスクドライブや電源など、再利用できる部品も 多いはずだ。このようなものまで再資源化されてしまうのは、個人 的にはなんとももったいない気がしてならない。

中古PC市場への期待

消費者の立場としては、お金を支払ってまで回収してもらうのはま だ少し抵抗がある。その際に役に立つのが、中古PCを引き取ってく れる店だ。たとえ買い取り価格が二束三文あるいは無料であっても、 お金をかけずに処分できるのはありがたい。今まではソフマップや 秋葉原のPCショップが主流であったが、遠方からの買取の手間を考 えれば、今後は地域のリサイクルショップにも中古PCが出回るかも しれない。

中古PCの買取・販売には、IBMNECといったメーカも積極的な姿勢を見せている。 消費者としては、買取の場合でも、その中古PCを購入する場合でも、 このような仕組みが用意されているのは助かるし、何より一定の安 心感があることが心強い。コスト面の問題は大きいだろうが、他の PCメーカにもぜひ追従して頂きたいところである。

しかし、古い機種でこの枠組みの対象外であったり自作PCの場合は そもそも買取の対象とならない場合がほとんどである。CPUやドラ イブ類などのパーツは買取対象となっても、安物PCケースや改造し た物は難しいようだ。

古いPCの有効活用

それでは古いPCや壊れたPCを再生して、そのまま有効活用してしま おうという流れもある。日本IBMとマイクロソフトは、社会貢献プログラムとしてリユースPC寄贈支援プログラムを共同で実施し ている。 一方で、マイクロソフトは製品のサポート提供期間を、プロダクトサポートライフサイクルポリシーと して公表しているため、二年三年と使い続けるには不安が残る。

つい先日、必要に駆られて、古いPCにRedHat Linux 9をインストールしたのだが、そ の設定が格段に楽になっていることに驚いた。 CDを入れて指示通りに進めるだけで、以前は苦労したXFree86(フ リーUNIXの世界で広く使われているGUI環境)でさえ、いとも簡単 に設定できてしまったからだ。 RedHat Linux 9の場合、CPUはPentiumII/400MHz、メモリは192MB (グラフィックモード時での推奨スペック)という低いスペックで も動作するため、古いPCの再利用には有効な手段と言える。

ただし、これらのOSを使いこなすにはまだそれなりの経験と知識が 必要である。WindowsPCの市場の大きさや、これらのOSに対する敷 居の高さを考えれば、せめて見た目や操作感をWindowsのようにす るのが得策かもしれない。例えば、LindowsOSや来月リリース予定のTurbolinux Suzuka などはその代表例であり、今後もこの流れは広がっていくだろう。

リサイクルではなくリユースを

どのようなPCであれ、いずれ故障や性能に対する不満により使われ なくなる時は来るので、今回のようなPCリサイクルの仕組みはまっ たく不要というわけではない。それどころか、低価格で高性能な新 品のPCが手に入る時代や環境面を配慮すれば、今後発生する古いPC の大量排出には必要不可欠な仕組みであろう。

しかしPCリサイクルには、他の製品と同列には考えられない面も忘 れてはならない。NPO法人ユニバーサル・コミュニティ・センターでは、 PCの回収及び再生、再活用を意欲的に進めており、今後このような 活動が全国に広まることを期待させる。 あなたの使っているPCも使わなくなった時に安易な処理法を取るの ではなく、もう一度その利用可能性を考えてみてはいかがだろうか。