先日、家でパソコンに向かって仕事をしていると、2歳の娘がそのパソコンを目当てにやってきた。 娘は、キーボードを打ちまくり、作業中のファイルがどんどん壊れていくのを見るのがよほど面白いらしい。 そうした時、妻は「幼児にテレビやパソコンは良くない」と、嫌がる娘を強制退去させる。 作業中のファイルの方の心配は一切してくれない妻に、ちょっと腹を立て気味に、 「一方的な情報の受け手になってしまうテレビをパソコンと同列に扱うのはおかしい」などと理屈を言ってみたが、 やはり娘には早々にお引取り願うことにした。パソコンの電磁波が心配であるし、肝心の仕事が進まないのも困る。
パソコンは幼児に良くないのか
遠ざかる娘の泣き声を耳で追いながら、改めて「幼児にとってパソコンは本当に良くないのか」と自問してみた。 「幼児期ほど外部環境との積極的なインタラクションが大事」という妻の意見には全く賛成であるが、そうであれば、 それなりの情報コンテンツを開発することもコンピュータであればできる筈ではないか。 娘に何度も絵本を繰り返し読むように頼まれると、それこそコンピュータならではのインタクティビティをもった 「電脳絵本」のようなものがないかと思うことがよくある。
実は進んでいた幼児期のパソコン利用
そこで調べてみると、実は幼児向けソフトは少なからず開発されていることが分かった。筆者待望の 電脳絵本 も幾つか提供されている。 興味深いのは、幼児教育の分野で実績がある幾つかの教授法をパソコンで実践できるソフトも提供されていることだ。例えば、 数字を学ぶ教育法 を扱ったソフトは、乳幼児(0歳児)から数の概念を学習し始めることを狙ったものだ。
一方、最近では、幼児教育のなかにパソコンを取り入れる動きも活発化しているようだ。 パソコンに早く慣れさせたいという親の希望を反映して、パソコン教育を導入する保育園が急増しているという。
さらに、幼児教育にパソコンを導入することでコミュニケーション能力が高まったり、教育効果が向上する といった具体的な効用が期待できるという 実証的研究 もある。
望ましいコンピュータ初体験とは
幼児にとってパソコンは必ずしも悪いものでないことは分かったが、かといって自由にパソコン を触らせておけば良い、というものでもなかろう。子供にとって望ましいコンピュータ初体験 とはどのようなものか、親としても考える必要がある。幾つかのことを考えた。
第一に、子供が自立的にパソコンと向き合う場合と、幼児教育の一部としてある程度管理された環境の下 でパソコンに触れる場合は明確に分けて考えたほうが良さそうだ。主体的な目的を待たず、なんとなく幼児期からパソコン を使っていると、仮想的な世界にどんどんはまり込んでしまう危険があるのではないか。やはり幼児期では、 親や先生等と一緒にパソコンと触れていくことが必要だろう。先に電脳絵本 のことを書いたが、 これを幼児に与えたままにしておくのでは、やはり親として失格かもしれない。
第二に、幼児とパソコンの関わり方についてガイドラインのようなものがあると参考になる。 例えば、パソコンを使った幼児教育を研究している 財団法人コンピュータ教育開発センターが、幼児用の教材ソフトについて 評価基準を作成しているので、幼児用ソフトの選定の際には参考になるかもしれない。 しかし、もっと欲しいのは幼児にパソコンを触れさせる場合に、親としてどのような環境を用意し、どのような 接し方をとるべきか、といった実践的なガイドラインである。