「地球環境」や「持続可能な社会」という言葉が使われ始めてから10年以上経つが、最近の目立った気候変動に対する危機感や、それに係る国連を初めとした各国の対応により、環境対策は意識の上ではずいぶんと浸透してきた。そもそもこのような状況になった根本の理由は、消費が美徳という、コマーシャリズムにのっとった先進国の資本主義経済によるところが大きい。但し、 温暖化問題は、温室効果ガスだけの問題ではなく単純ではない のだが。 ところで、3年経てば陳腐化するというPCは、無駄な消費の代表のように思える。持続可能な社会へのPCを含むIT分野の貢献について考えてみた。
継続可能なハードとPCリサイクル
質実剛健ということばがある。例えばリーガルの靴、バーバリーのコート、サムソナイトのバッグなどは、丈夫で長持ちすることで有名である。これに対し、最も変化の激しいと言われるIT分野、特にPCは、 CPUの演算速度、通信速度、記憶容量がまだまだ発展途上であるので、コストパフォーマンスの面で過去のPCが陳腐化し買い替え需要を喚起している。 PCケースやマザーボードの規格も数年前のものが使えないという現状もある。加えて、UNIXほど後方互換性のないWindowsのバージョンアップによりそのプレインストールモデルが買い替え需要を喚起しているという問題もある。経済にとってはよいかもしれないが、環境やユーザメリットの点からもう少し継続性を考えてもよいのではなかろうか。
家電リサイクル法が整備され、今年の10月から家庭系使用済みパソコンを再資源化する PCリサイクル が始まることになった。また資源採取から製造・物流・使用・廃棄リサイクルにおいて 環境に配慮した製品につけられる環境ラベル「エコリーフ」 を適用されたノートPCもでてきた。 しかし、まだ規格の統一等で、設計レベルでの継続利用性を高めることが可能ではなかろうか。発展途上な製品だから、競争原理を保つために独自規格を許す、ということも考えられるが、果たしてそれだけで片づけてしまってよいのだろうか?そろそろPCも継続利用可能なアーキテクチャを意識してもよいのではなかろうか?
メディアのデジタル化
高圧縮技術による動画、静止画、音楽をメモリやハードディスクに蓄積することは、アナログレコードやビデオテープのようにメディアを消費しないという意味で、エコロジカルといえる。単位面積あたりの記憶容量の増大がそれに拍車をかける。その流通形態がネットであれば、物流が生じないという意味でもエコロジカルである。ただ一つ進展が望まれるのは、携帯音楽プレーヤなどと比べ普及が遅れている 電子書籍 である。電子書籍コンソーシアムが2000年に実証実験を実施した以後、電子書籍が普及する兆しはみられない。ビューアの価格、解像度、著作権保護等の問題があるのだろうが、他メディアより遅れている分野であり、今後の進展が期待される。
ECによる物流革命
電子商取引の進展がエネルギー消費を抑える という報告がある。アメリカでは、1990年代後半、実質GDPの伸びに比べ、GDPあたりのエネルギー消費量が減っている。この理由としてインターネットの普及が、社会のエネルギー消費の増大を抑えたのではないかというのである。電子商取引は、ビルをウェブサイトに、倉庫をサプライチェーン用ソフトに、物流をネットワークに置き換えることができるからである。
冒頭に触れた本「地球温暖化」では、温暖化の最も大きな影響は太陽活動である可能性があるが、例えそうであっても今我々が開発しようとしている環境技術は将来のためにプラスに作用することはあっても、マイナスに作用することはないと説く。そのためにIT分野もより環境への貢献を考えるべきではなかろうか。これは、例えば後方互換性なPCであり、OSであり、より効率的なネットワークの活用である。