コンピュータをまともに使い始めておよそ10年になる。 その間、自分が使っていたコンピュータやさまざまな環境はどんどん変化していった。 例えば、ディスプレイはモノクロCRTだったのが、今ではカラー液晶になったし、 マウスは3ボタン+専用の反射板だったのが、パッドもいらない光学式ホイール付きになった。 しかし、その中で一つほとんど変わっていないものがキーボードである。
なぜこの並び?
ではキーボードは昔から完璧に使いやすいものなのかと言ったら、そうでもない。 初めてキーボードを見た人は、その奇妙な文字の並び方に戸惑う。 ものの並び方といえば、アルファベット順、番号順、50音順くらいをさっと思い浮かべるが、 そのどれにもあてはまらないからだ。そして最初にキーボードを触ると、 「f はどこ?」とか「日本語(かな)の書いてある意味はナニ?」とかいう質問が飛び交う。 どうしてこの並びになったかはいくつか説があるが、 使い勝手を考えたものでなかったことは確かのようだ。 しかし、実はこのことにきちんと異議が唱えられ、配列の違うキーボードもいくつも作られている。
- Dvorak配列キーボード
私たちが普通使っているものは、QWERTY配列と言われる。 (左からQ,W,E,R,T,Yの順にキーが並んでいるので) それに対して、英文のスペルを分析して開発されたものがDvorak配列である。 右手と左手交互に打鍵するようになどの工夫がされている。 この名前は博士の名によってつけられたもの。 - 親指シフト(NICOLA規格)キーボード
富士通がワープロ全盛期に発表したキーボード。 基本的には一つのキーに二つのかなが割り当てられており、 上段に書かれた文字を入力する場合は、 親指の位置にあるシフトキーを同時に押すことで実現する。 同時に打鍵することでストローク数を減らし、日本語を快適に打てるよう工夫されている。 - NARA CODE
簡単に日本語を入力することを一番の目的としてつくられたキーボード。 誰にでもすぐに覚えられるキーレイアウトということで、50音順配列を採用している。 これは最初に見たとき、ストレスがないという意味でもとても思いやりのあるものだ。 キー配列を変更できるソフトウェア方式もある。
いろいろあるけれど
キーボードにはいろいろな配列のものがあるといっても、 違うものを使っている人の数は圧倒的に少ないのが現実だろう。 従来のものが普及してしまったからと言ってしまえばそれまでだが、他にも理由はある。 それは、一般的なユーザにキーボードを選ぶという発想がまずないからだと思う。 パソコンを買うと当然キーボードが付いてくるから、キーボードだけ別売りしていたり、 いろんな大きさのものがあるということすら知らない人は多い。 ましてや、キーの並びが違うものがあるなんてことは絶対に知らないだろう。
入力にしても、タッチタイピングの本には、 さぁアルファベットの位置を覚えてローマ字で打ちましょう。 と何の気なしに書いてある。 かなで打っていたのは昔のことです。とか、 かなだと50個のキーの位置を覚えなくてはいけないが、 アルファベットなら26個で済むから楽だとか。 こう書かれると騙されそうになるのだが、ローマ字で打つとその分打つ回数は増える。 さらにもう少し考えてみると、例えばかなキーが50音順で並んでいれば それは誰もが小学校の頃から見慣れているから易しいはずだ。
さらに、より使いやすくと開発されたものでも、 結局は、訓練すれば快適だがというものが多い。 QWERTY配列はいい加減だから打ちづらい→では、打ちやすいものを。というところまではいいのだが、 たいていは、「速く」打てることを目指して研究されている。決して「楽に」とか「すぐに」ではないようだ。
そしてもう少しやわらかく
コンピュータにはフルキーボード(とマウス)、キーボードは両手で打つものというのが一般的だが、 それにこだわる必要はない。 もっと打ちやすい配列をとか、自由にキーを並べ替えるとかではなく、 慣れているこんなものに似たキーボードを試してみたらどうだろうか。 新しく覚えなくてはと構えるからしんどいのであって、これならというのがあるかもしれない。- 片手仕様電卓タイプ・CUT Key
たった22個のキーの組み合わせでフルキーボードと同じ機能を実現している。 片手で使うことが前提とされており、電卓のような見た目。日本語はローマ字入力。 母音と子音をほぼ50音順に分かりやすくレイアウトしている。 両手でかなり速く打てる人にはかなわないのかもしれないが、 どこにどのキーがあるのかを探すストレスが少ないこと、 片手があいていることなど、快適要素は多そうだ。 - ゲームコントローラタイプ・tagtype
左右に5個ずつ2列に配列された10個のボタンと、いくつかの機能ボタンで入力を行う。 かな入力は、あ行からわ行までの行を選んでから、母音を選ぶので、構造としてはローマ字入力と同じ。 数字やアルファベットを打つためにはモード切替を繰り返す必要があるので、 慣れるまでは難しそうな印象があるが、ゲーム感覚で楽しめそう。 - 携帯電話タイプ・Keiboard
キーボードを携帯の形にしてしまった製品。 携帯では文字が打ちづらいのでキーボードが欲しいとはよく聞く意見だが、これは逆の発想だ。 携帯電話でならおそろしく早く文字が打てる人が、 パソコンを使わなければいけない状況に陥ったとき用? ニーズはよく分からないが、買ったら一通りは盛り上がりそうなちょっとおもしろい一品。
配列やかたちは普通のがいいという方も、一度キーボードを見直してみるのもよいだろう。 上にあげただけではなく、まだいろいろなキーボードが開発され製品になっている。 本当に普及させる気はあるの?という遊び心いっぱいのものから実用的なものまで様々だ。 中にはテーブルなどにキーボードを投射するなんてものもあった。 これを見て紙のピアノで練習する昔のドラマのヒロインを思い出したのはわたしだけでしょうか。。
本文中のリンク・関連リンク:
- いろいろなキー配列
- いろいろなキーボード
- CUT Key
- tagtype
- Keiboard
- twiddler2
- HalfKeyboard
- Canesta Keyboard : キーボードの映像を投射し、入力を行うキーボード
- Foldable キーボード : 完全防水、ふにゃふにゃのキーボード
- Happy Hacking Keybord 無刻印モデル : キートップに何も文字のないキーボード
- zboard : 全てのキーを一括交換できるキーボード