海峡ドラマシップの成長型コンテンツ

関門海峡をテーマにした

ミュージアム 海峡ドラマシップが北九州市の門司港に先月末にオープンした。

ゴールデンウィークの10日間で12万人も集客し、その後も順調に来場者数を伸ばしている。 ただ、イラク戦争の余波や新型肺炎SARSの影響で国内旅行が好調。その上に、 関門海峡には巌流島があり、NHK大河ドラマ「武蔵」のおかげでいま関門一帯は観光ブームに 沸いている中での好成績で、本当の集客力が試されるのはこれからだ。
壇ノ浦、巌流島、高杉晋作ら幕末ドラマの舞台、 明治・大正・昭和初期のレトロな時代などの歴史シーンを 有名作家たちによる人形やジオラマで再現した歴史展示エリア。 1日に700隻以上の船が航行する海峡の姿、 通行する船舶や潮流に関するリアルタイム情報、 関門海峡の本格的な操船シミュレーション体験、 世界の海峡や釣り情報などが展示された海峡展示エリア。 かつて海外航路の港として賑わう門司港に実在した 大正ロマンの薫り漂う建築物と街並みを再現した商業エリア、 市民が利用できるホールやギャラリーなどを備える。
いわゆる観光ミュージアム

の海峡ドラマシップには学芸員がひとりもいない。 運営しているのはすべて北九州市の観光課の職員である。

実は、私たちがここの展示コンテンツ、ホームページ、インターネットサービスの構築を担当した。 学芸員がいなくてもいかにコンテンツを陳腐化させずに魅力を維持できるか。 これまで文化施設の情報環境を設計構築してきた私たちにとっても新たな課題であったが、 実はこれを考えることは市民参加型や利用者交流型のミュージアムを考えることであった。 これを解決するために、4つの工夫をシステム化したので紹介したい。

  • 歴史エピソード・伝承諸説の収集

    学芸員がいない。ならば、いるとなかなかできないことを考えた。 ジオラマ展示に対して歴史解説や制作過程などを紹介する情報端末がある。 そこに、教科書には書かれていないような伝承諸説や言い伝えなどを紹介する 「諸説・エピソード」画面を用意してみた。 このネタは一般の方にもらう。 「サポーター」として登録してもらった利用者が専用ホームページから 投稿した情報は、データベースに自動的に登録される。 まずスタッフが読んでみる。興味深いものや面白いものに公開チェックを付けると即座に公開される仕掛けだ。 ふつう博物館で扱うことが躊躇される珍説もすでに並んでいる。

  • かつての地図による思い出・出来事の収集

    現在の門司港地区の地図と、レトロな時代の地図が並べて表示されている。 どちらかの地図を動かすともう一方の画面も同じに動き、常に同じ位置が表示される。 地図上のアイコンに触れると、かつての建物や出来事が甦る。 門司港地区は明治・大正・昭和初期のレトロな時代がそのままに残る素晴らしい観光地。 ただ、街が誇りにしてきたものの生の話や物語をもっと伝えたい。 アイコンの情報は、やはりサポーター制度によって地元の方などから寄せられ、今後も加えられていくだろう。 端末の前で、おばあさんが孫に活き活きと街を説明をしている姿を見掛けてとても嬉しかった。 そして、現代との比較。昔の街の活力を現代に転写してもらいたいのだ。

  • データベースの構築とホームページでの全面公開

    観光ミュージアムでもコレクション収集ができないか。 関門海峡に関する知識・情報の収蔵庫としてデータベースを構築した。 カテゴリーから検索したり、館内のある展示に関連するデータという検索の仕方もできる。 そして、 データベースは贅沢にもホームページですべて 公開してしまった。 データはスタッフや開館支援関係者の手作りのレベルであるが、「ここが間違っている」「もっといいデータがある」 「みんなで更新しませんか」といった人々の交流が生まれることを期待したい。 蓄積されていくデータは将来必ずや施設や地域の資産となる。

  • 学校見学のシステム支援

    学校での社会見学、総合的な学習の時間を支援するためのシステム。 家族や友人グループ、一人でも利用できる。 「予習→見学→復習」という3つの学習の流れに沿って見学をサポートする。 予習では、展示物のミニガイドをインターネットから検索し見ることができる。 予習したミニガイドを見学ワークシートとして印刷し、見学に持っていく。 ただ見るだけではわからない展示の見所や面白いポイントに気が付いてもらいたい。 もっと見学を楽しんでもらいたいのだ。 現在最終調整段階、まもなく公開予定なので、このシステムについては またの機会に詳しく紹介したい。


コミュニティによる交流

やネットワーキング(交際活動)が、今後さまざまな文化施設で取り組まれていくだろう。 その交流の場では、施設と来館者、自治体と個人、先生と生徒などの関係が組み換わることもある。 それを念頭に置いて、情報空間と実空間をデザインすることが重要だ。 文化施設の価値、”ブランド”はどんなコミュニティが住み込んでいるかで決まるといえる。



参照

海峡ドラマシップ