去年から今年にかけて、様々なメーカからホームサーバと言うキーワードで様々な機能を持った機器が発売されている。ブロードバンドルータの発展系であるLivingGate、HDDレコーダの発展系であるGalileoなど様々であるが、この流れに乗ってパソコンがホームサーバの地位を狙っている。個室や書斎のみならず、本丸(一家の中心)であるリビングへと攻め入ろうとしているのである。だが、パソコンがリビング進出を狙うのは初めてではない。これまでも何回か挑戦してきては敗退している。今回は悲願の進出を果たすことができるのだろうか。
PCホームサーバとは?
でも実は、パソコン業界が一致団結してリビングに設置できるようなパソコンを共同・競争開発している、と言うわけではないのである。パソコン業界の大きな流れとして、リビングへ、と向かっていることは確かであるが・・・
意を決してルビコン川を渡ろうとしているPC陣営のラインアップを見てみよう。ソニー、NEC(VALUESTAR TX シリーズ)、富士通がそれぞれホームサーバを出荷している。ただ、多くの消費者の第一印象は恐らく、「普通のパソコンとどこが違うの?」と言ったところだろう。
正直なところ、現在出荷されているPCホームサーバは従来のパソコンの機能を少し拡張させただけのものであり、何も目新しいものはない。
実はOSの戦争
冒頭で紹介したLivingGateにしても、Galileoにしても、実はOSにはLinuxを採用している。あのソニーと松下でさえもデジタル家電向けLinuxの共同開発で合意しているのである。この動向には他社も追随する動きもある。ソースコードが公開されており、自社のニーズにあったチューニングが可能なことが人気の秘訣であろう。
対するWindowsを擁するマイクロソフトもマルチメディアサーバとしての位置づけでWindowsXP Media Center Editionをリリースしている(英語版)。また、Linuxの利点であるソースコードの改変についても、WindowsCEのソースコードの改変を可能にするライセンスプログラムを開始することで対抗している。
このホームサーバ熱も、実はエンタープライズサーバ、ビジネスデスクトップに続く第3のOS戦線に過ぎない、との見方ができる。
不毛な戦いよりも機能を磨け!
従来のパソコンの焼き直しであるPCホームサーバの苦闘を尻目に、ソニーのCoCoonや松下のブロードナウ(ちなみにこれらのOSもLinux)など機能を限定したホームネットワーク機器が、使いやすさを武器に続々とリビングに進出している。CPU、HDD、ネットワーク機能と多機能なOSを備えたこれらの機器がこれから増え続ける事は確実であろう。これらのホームネットワーク機器は近い将来、リビングに複数同居することになるであろう。
ここで、ちょっと将来について夢を見てみよう。リビングに複数のホームネットワーク機器が存在し、それらが協調しながら動作することでホームサーバとして機能したらどうだろう。先進的な分散サーバ構成をリビングに、手軽に構築するのである。ネットワークはもちろん無線LANで、面倒な配線も不要。そんなホームサーバの考えられる機能としては、例えば、
- MPEG等のエンコーディングに必要なCPUパワーを融通しあう
- お互いのHDDにバックアップを取り合う
- ある機器が故障しても別の機器が肩代わりする
- 相互に監視することにより、不正アクセスを検知する
- 情報(コンテンツ、TV番組表、ユーザ情報・・・)の共有
リビングでくつろぎながら、快適に安心して使えるホームネットワーク機器をユーザは望んでいる。ホームサーバと言う言葉に固執せず、楽しくてエキサイティングなホームエンターテインメントマシンの登場に期待したい。
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