中国次世代インターネット〜巨大市場に売り込め

先月中国では、次世代ネットワークに関する2つのイベントが開催された。 「中国インターネット大会」と「中国次世代ネットワークフォーラム2002」だ。 今回はこれらのイベントの印象を通じて、中国次世代インターネット市場につ いて考えてみる。

中国インターネット大会

中国インターネット大会(Internet Conference of China)は、11月25日〜 27日の3日間、上海の国際会議センターで開催された(基調講演は情報産業省大 臣)。今回が第1回ということで、内容はインターネットの要素技術に関連した さまざまな講演と主に中国企業によるデモンストレーションであった。

主に IPv6 などの次世代ネットワーク関連の講演を聴いた印象としては、 数年前の日本の学会発表の場に近いように思えた。現時点ではまだ実験ネット ワークの構築事例を紹介するという段階で、商用ネットワークについてはまだ 将来の展望という域を出ていない内容であった。その中では特に「IPv6に関し て中国は世界と同じスタートラインに立っているので機会がある」「2003年は 普及開始の年」という言葉が印象に残った。

本大会は、当初は10月末に予定されていたが、共産党大会とスケジュール が重なったため、急遽1ヶ月延期になったという経緯がある。そのために準備 が間に合わなかった感は否めず、直前まで講演者や開催内容が定まらなかった ようだ。日本からは、スピーカーとしての参加者は何人かいたものの、一般の 参加者は少なかった。デモについても、あまり目新しい展示はなく、中国国内 の通信会社や ISP などのサービスメニューの提示にとどまっていた。

中国次世代ネットワークフォーラム2002

一方、中国次世代ネットワークフォーラム2002(2002 China NGN Forum) は、11月27日〜29日の3日間、北京の情報通信省で開催された(基調講演は情報 産業省電気通信技術研究院所長)。ここでは 6TNet(中国国内のIPv6 実験ネッ トワーク構築プロジェクト)による相互接続実験イベントも同時に行われた。

内容は主にIPv6 に関連する講演やチュートリアルと、相互接続イベントの デモンストレーションであった。上のインターネット大会と比べると、内容を IPv6 に絞っているためか、小規模ながら活気にあふれていたように思えた。 会場となった情報通信省は比較的古い建物であったが、その10畳ほどのエレベー タホールをデモ会場としたため、つねに参加者があふれているという状態であっ た。デモではIP電話や MPEG2/4 のVoDや会議システムなどが展示されており、 ほとんどが日本企業によるものであった。ここからも、IPv6 アプリケーショ ンの世界ではまだ日本がトップを走っていることがよく分かる。

参加者は中国国内の産官学関係者が幅広く集まったという印象で、日本か らも総務省をはじめ、多くの企業が参加してプレゼンテーションを行っていた。 中国側の講演では、特に通信会社が次世代通信網として本気で IPv6 の採用を 検討している姿が垣間見られた。

中国次世代ネットは日本のマーケットとなるか

中国の IPv6 に対する関心はとても高い。なぜならば、約13億人と言われ る中国の人々がインターネットに接続するためには、現在のインターネットで 使われている IPv4 アドレスでは足りないからだ。インターネット発祥地であ る米国が多くの IPv4 アドレスを占めていることもあり、インターネット利用 の後発組であるアジア諸国に対しては、多くのアドレスが割かれていない。

一方、これは2つのイベントに参加して特に感じたことだが、中国はIPv6 の技術開発にあまり興味を持っていないようだ。日本は技術立国を自負してい ることもあり、やはりまずは技術優先で臨んでしまう傾向にある。実際、技術 無くして何も生まれないのは道理だが、中国にはそれを補ってあまりある消費 力がある。つまり、13億人とも言われる人口を抱える中国では、既存の技術を 組み合わせただけでも、まだ十分にビジネスモデルが構築できる。中国のイン ターネット人口は5千万人を越えたと言われているが、それでもまだ全人口の 5% に満たない。技術を海外から買ってきても、スケールメリットで十分儲け の出る商売が成り立つ。

中国と日本の関係は、これまでの政府援助や生産工場から買い手としての 市場にシフトしつつある。しかし中国国内の日本製品のシェアは低く、自動車 や家電、携帯電話などは欧米・韓国企業に敵わない。日本が世界に先駆けて技 術開発を進めている次世代ネットワークならば、日本メーカのルータやIPv6ア プリケーションは好印象を持たれている。今ならまだ勝ち目があるのでどん欲 にシェアの獲得を狙うべきだ。うかうかしていると技術だけ買われて、巨大マー ケットを中国本土の賢いビジネスマンにすべて持って行かれかねない。