動画編集に立ちはだかる壁

今年の秋冬のメーカー製パソコンのラインアップを見ても、その多くにテレビ録画機能、DV映像取込機能、DVD編集・記録機能が搭載されており、ちょっとした動画編集ブームとなっている。記録型DVDの普及もその一因であろう。

PCでTV番組を録画したり、DVから取り込んだものをそのままDVDに焼くのであればさほど難しいことは無い。しかし、PCならではのオリジナリティの高い動画編集を行おうとすると途端に様々な弊害が発生する。

もっと速いPCを!

動画編集にはほとんどの場合エンコード作業が発生する。AVIやMPEG2で取り込んだものを編集し、MPEG1/2/4などの形式で保存する場合である。エンコード作業はCPUを酷使するものだが、現在の最高性能CPUを持ってしても再生時間と同等かその2〜3倍の時間はかかるのである。PCならではの凝ったトランジションやフィルタなどを適用するとさらに2〜3倍の時間がかかるようになる。心情的には5,6分で終わって欲しい作業であり、10GHzくらいのCPUが2,3個欲しくなるものである。

動画ファイルはとかくそのサイズが大きくなるものであり、ギガバイト級のファイルが山のように出来上がるのである。例えば、1時間のドラマをMPEG2で高画質(CBR, 8Mbps)録画すると約3.8GBになる。そのような番組が週に3つあったとして、1週間で11.4GB、1ヶ月(4週間)で45.6GBにもなる。AVIで保存する場合はその3〜4倍になる。編集する場合は、オリジナル、中間ファイル、出来上がりファイルと様々なファイルが出来る。さらにDVDに記録する際にはDVD形式ファイル、ISOイメージファイルが作成される。そうなると、まずは大容量のハードディスクが必須となる(200GBでも足りないくらい!)。データ転送速度もネックとなる。ディスク間の転送でも1GBのファイルを移動するのに1分強かかる。ちなみに、LAN(100Base)上ではその数倍、無線LAN(802.11b)上では10数倍かかるのである。

もっと扱いやすいソフトを!

動画編集用ソフトウェアにも改善が必要である。意外と知られていないことだが、Windowsでは4GB以上の動画ファイルが扱えないソフトが多いのである。Windowsの標準APIが対応していないとのことだ。日本独自の音声多重放送を日本語音声と他国語音声として扱う(複数音声ストリームを扱う)ソフトウェアも少ない。音声多重番組を何も考えずに編集すると、多くの場合は右から日本語、左から英語が同時に聞こえてくるビデオが出来てしまう。多くのメジャーな動画編集ソフトウェアが外国製のものであることがその理由の一端であるが、外国製ソフトであるがために、日本人的感覚ではしっくりこない機能・デザインである場合が多い。

これから増えてくるであろう、動画編集初心者にも優しいソフトが必要になるであろう。いまあるソフトでも使いやすそうに見えるのだが、いざ録画しておいたTV番組のCM部分を切り取ろうとしても、思った位置で編集できず、イライラすることがある。

良い循環が生まれれば・・・

このように、動画編集を行うと、これまでそこそこの性能で満足していたPCに大いなる不満を感じるようになるし、優れた動画編集ソフトが欲しくなる。そして、いまや動画が記録できないデジカメのほうが珍しいくらいだし、動画メール付携帯電話が人気を集めている状況で、より多くの動画コンテンツ/ニーズが増えることが予想される。

ユーザニーズがある・・・それに見合うハードウェア/ソフトウェアが開発される・・・さらなるニーズが発生する・・・と言う良い循環が生まれれば、閉塞感がただよう現在のパソコン業界に良い刺激が与えられるのだが。次のキラーアプリは動画にヒントがあるのかもしれない。

  • 各社秋冬ラインアップにみる動画系PC
    • Sony Vaio
      PCV-RZ70P・・・元祖テレビPC。Vaioのこのシリーズ(Giga Pocket)が火付け役。最近ではノートも。
    • NEC
      Valuestar・・・TVチューナーボードメーカーとしては実績あり
    • 富士通
      FMV Deskpower・・・S社の製品に良く似ている
    • Dell
      Dimension・・・ビデオ機能は前面にはアピールしていない
    • Apple
      Power Mac G4・・・強力なビデオ編集性能/機能
  • 動画編集ソフト