とは、2003年の東京都のオフィスビルの大量供給によって、 賃貸ビル市場は大幅な供給過剰に陥り市場は混乱する、というものだ。 しかし、同じくオフィスビルの大量供給によって急激に市況が悪化した94年とは違い、 中小ビルの竣工が少なく大型ビルが中心となっていて、 供給量全体で見ればそれほど過剰とはならないという楽観的な見方もされている。
それより、2003年を境にオフィスビルに求められる設備スペックやITインフラの基準が 変わっていくのではないかと思う。 今年から来年にかけて丸の内や六本木、汐留、品川などで竣工するビルの特徴は、 フロア面積が大きいことと、 もう一点は、セキュリティやビルマネジメントシステム、 オフィスの情報化インフラ、BA(ビルディング・オートメーション)用ネットワーク などのビルテクノロジーが取り込まれていることだ。
ゼネコン初のITソリューション
のショールーム、清水建設の「 ITソリューションラボ 」を先日訪れた。 ショールームそのものが電磁シールドされているデモ空間になっており、 中では、空調コントロールや不動産運用などのビルマネジメント分野、 建物内や関連施設をむすぶ広域におけるネットワーク分野、 情報漏洩対策や電磁・磁気シールド技術など電磁環境分野、 入退館管理を中心としたセキュリティ分野、 各種業務を支援する業務サポート分野の5つの分野、約30点が展示されていた。
LonWorks専用の通信プロトコルLonTalkは、 国際標準機構ISOのOSI(オープン・システム・インターコネクション)の7層すべてをサポートしており、 ゲートウェイ装置を介してIP上での利用が可能となっている。 通信・制御の両機能を持つ同社のLSI「ニューロンチップ」を搭載したコントローラ(下の写真はその一つ)を使って、 電気、空調、照明、セキュリティ等の各種設備を 一元的に制御・管理することによって、空調や照明、施錠装置などがさまざまにコントロールできる。
省エネルギー化やIT化など、それぞれの設備の技術革新は非常に早い。 近年の建築設計においては、インフィル(内装設備)は入れ替えのしやすさや、 LCC(ライフサイクルコスト)が重要になってきている。
フロア面積の拡大
でも欠かせないのはITだ。それは1人当たり床面積を増やすことばかりではない。 急速に進む会社組織のフラット化に対して、 より大きなユニットを同一フロアに配置させることや、 ユニットの拡大縮小などの変化に対応させるための柔軟なオフィス空間を可能にさせる。 いかようにでも仕切り、さまざまな業務環境を柔軟に作り出していくための有線・無線ネットワーク技術や セキュリティ技術、各種センサ、そしてそれらを備えたIT家具も登場するだろう。
2003年問題がひと段落した2005年あたりにはほとんどのビル内の設備はIP上で通信可能になると予想され、 その1,2年内にはITと建築デザインが融合した新しいスタイルのビルが新たに市況に出現する可能性がありそうだ。 最近それを実現するだろうと思わせる気鋭の建築家が増えてきている。 新しい建築スタイルの胎動については折を見てまたこのコラムで紹介してみたい。
参照
清水建設の「 ITソリューションラボ 」
LonWorks(R)の開発元、米国エシェロン社