次世代DVDの開発が盛んになってきており、早くも技術・規格化の競争が始まっている。しかし、現行のDVDが「多芸多才、融通性」を売りにしている反面、欠点にもなっている。是非とも次世代DVDは「八方美人」な記録メディアになって欲しくないと思う。その理由をこれから説明しよう。
ちなみに、次世代DVD規格について記事として取り上げるのは時期尚早と思い、今回は深入りしない。現時点の報道のリンクを下のリンク集にまとめたので、興味のある方はそちらを参照願いたい。
メーカにとってversatile
DVDの”V”はvideoではなく、versatile(多芸多才、融通のきく)の略である。事実、DVDと名のつくディスクは様々な用途に使われている。パソコン、ビデオ、音楽、ゲーム・・・
ある程度ハードウェアの共通化が図られているため、マスプロダクションによる低価格化が可能となり、例えば、DVDプレーヤーも1万円台になってきた。これは大いに歓迎されるべきことである。
しかし、versatileであるというのはメーカー(AV機器、コンピュータ[ハード/ソフト]、映像/音楽コンテンツ)側に立った見方である。いわば、これらの業界団体の大いなる妥協案が現行のDVD規格である。業界間、業界内(既存勢力と新興勢力)の綱引きの結果、DVD-Video、DVD-ROM、DVD-Audio、DVD-VR、DVD-RAM、DVD-R/-RW、DVD+R/+RW、Mt.Rainier(ここではあえて物理フォーマットと論理フォーマットを併記した)など、versatileに多様なフォーマットが誕生したが、消費者を混乱させただけである。そして、これから立ち上がらんとしている記録(追記)式DVDの市場を混乱させる主要因となっていることは明らかである。さらに、DVD-Videoだけとっても論理フォーマットが”幅を持たせた”規格となっているため、再生できないDVDなどの問題が発生している。最近では、再生する環境によって色味が変わる問題なども発生している。
あと、メーカがversatileにリージョンコードを付加できることにより、海外版しか発売されていないDVDを日本用DVDプレーヤーで再生できない、と言った利便性の足かせをはめられていることも忘れてはならない。
DVDを作ってみると分かること
DVD+R/+RWドライブを使って、パソコンでTV番組を録画したDVDを作ってみた。物理媒体、論理フォーマット、DVD-Videoで決められているコンテンツのフォーマット、MPEG2のパラメータ設定などなど、versatileな部分が多すぎて、分からなくなってしまう。
DVD-Videoで規定されている仕様も幅を持たせているため、DVD-Videoおよびそこで規定されているMPEG2のパラメータ、音声データのフォーマットに適合しているディスクを作成しても、DVDプレーヤーによって再生できたり、できなかったりするのである。部分的に不具合(ブロックノイズ多発、音声が途切れる等)がでる機種もあった。これは、各社が販売しているDVDプレーヤーのデコードロジックが微妙に異なるからではないかと推測している。
次世代DVDに望むこと
実際のところ、ユーザ(消費者)としては、versatileであることはそれほど重要ではなく、使いやすい(convenient、usable)ことのほうが望まれているのである。
ユーザにとっては、規格がはっきりと、しっかりと決まっているほうが便利なのである。融通がきいて色々出来る、と言われると聞こえは良いが、それだけ選択肢があって迷い、さらに互換性問題が発生しやすいのである。多機能で低品質のものよりも、単機能で高品質のもののほうが使いやすいのである。
現行のDVD-Videoはそれなりに成功しているので、次世代では、現在でもユーザが切望している、「使える書換型大容量メディア」を作って欲しい。この願いを反映しているかどうかは不明だが、次世代DVDが書換型から開発が進んでいて、とても望ましいことである。しかし、最大の難関は「規格の一本化」であることに変わりはない。
本文中のリンク・関連リンク:
- 次世代DVD
- Blu-ray Disc
片面1層で容量27GB、青紫色レーザ、旧名称:DVR-Blue - 東芝方式
片面1層で容量20GB程度、青紫色レーザ - NEC方式
片面1層で容量20.5GB、青紫色レーザ
- Blu-ray Disc
- 追記型DVD関連団体
- RW Products
Promotion Initiative
パイオニアを中心とした、DVD-R/-RWを推進する団体 - Recordable DVD
Council
DVDフォーラムが規定する追記型DVD(DVD-RAM、DVD-R/-RW)を推進する任意団体 - DVD+RW
Alliance
DVD+R/+RWを推進する任意団体
- RW Products
Promotion Initiative