PCアーキテクチャ − 機能統合の先にあるもの −

パソコンの蓋を開けたことがない、と言う人が圧倒的多数であると思うが、今回はパソコンの中身について考えてみたい。ちなみにここで言うパソコンとは、一昔前はドスブイ、AT互換機、最近ではWindowsパソコンと呼ばれる、Windows(や、Linuxなどのfree UNIX)が稼動するものを指す。

統合チップセット

パソコンには主要なICチップが3つある。CPU、ノースブリッジ、サウスブリッジである(ノースとサウスを合わせてチップセットと呼ぶ)。元々これらのチップはシステムの根幹機能を司るものであり、メモリ・コントローラ、CPU・システムバスのコントロール、外部インターフェース(フロッピー、ハードディスクなど)などの機能を持っていた。少し前からビデオ、サウンド、LAN(一部機能)などの付加的な機能がチップセットに統合されてきており、最近ではCPU、マザーボード、メモリ、ハードディスク、CD-ROMドライブ、ケースがそろえば一通りの機能を備えたパソコンが出来てしまう。このようなチップセットのことを統合チップセットなどと呼ぶことがあるが、これからも多くの機能が統合されていくようである。Intelは無線LAN機能もチップセットに統合していくと報道されている。

とにかく安く

統合チップセットがうける理由として、パソコンの全体価格が抑えられることが挙げられる。部品点数が減る上、組み立て、検証にかかる手間も省ける。ITバブルの崩壊などと揶揄される現在の景況において、性能・機能向上が一段楽している今のパソコンに求められるものは価格に絞られてきている。このことが統合チップセットの追い風となっている。

最近の統合チップセットの機能は、安いと言っても1世代くらい前の機能を十分有しているのである。

  • メール、ブラウザ、オフィスアプリケーション(は当然として)
  • CD-R作成(バスがボトルネックにならない)
  • DVD鑑賞(5.1chサラウンド対応も!)
  • グラフィックスを駆使しないゲーム
など、これらの用途には全く不自由がないくらい、必要かつ十分な機能なのである。ユーザとしても、追加投資なしで、最初から一通りの機能が揃っていた方が安心できる。サウンドボードを増設したらパソコンが起動しなくなった・・・などのトラブルもほとんどなくなる。

良いことがあれば、悪いこともある

いいこと尽くめのように見える統合チップセット。しかし、不安になる点もある。機能が統合されると、技術の進歩が遅くなるのである。メーカは少ない費用で多くの機能を搭載できるので、余計なお金を掛けてまで「より良い」ものを搭載しようという努力をしなくなる。ユーザも現状機能に慣らされて、より良いものに向上させようと言う意識がなくなっていく。また、通常チップセットの設計から製造まで1,2年かかることから、技術の開発サイクルが遅くなることも懸念される。

しかし、最も危惧しているのは、パソコンを組み立てる楽しみが失われることである。自分の好みのパーツを自由に組み立てることが可能であったことが、パソコンをここまで進化させた原動力であったはずだ。より安く、手軽で、便利なものにしようと努力すればするほど、「楽しさ」が減っていくようである。とは言いつつも筆者も、ついついUSBの手軽さに甘えてしまうのだが。