ホットスポットはホットか?

無線LAN規格であるIEEE802.11bが標準となりつつある昨今、屋外(主に飲食店、ホテルのロビーなど)にてインターネットアクセスを局所(スポット)的に提供する、ホットスポットが本格化している。昨年までは実証実験レベルだったものが、実運用に入るものが出て来た。確かに外出先でネットを無料で利用できるメリットは大きく、サービスの差別化という意味ではそれを提供する事業者にとってもメリットはある。米国ではStarbucksをはじめ、多くの空港、ホテルロビーなどにホットスポットが設置されている。

数多くのホットスポットのうち、数例を挙げると、ヒルトン東京PRONTOなどが運用段階であり、実験レベルでは、モスバーガー品川プリンスホテルミニストップセンチュリーハイアット東京36Mbps無線LANのゲートウェイ大崎JRでは山手線主要駅にて実験を行っている。

ネットできる環境の整備

実証実験レベルのものも含めれば、非常に多くのホットスポットが存在するが、ゆったりとネットサーフィングを楽しめる環境は少ない。

一番の問題は電源である。PDAは問題にならないが、無線LANを利用するノートPCのバッテリー稼働時間は非常に短い。電源も含めて利用可能なホットスポットもあるが、まだ少数である。さらに、都市部の飲食店では店内が非常に混雑しており、「ゆったり」と利用できないのである。食べながらだとキーボードが汚れると言う理由以外に、飲食が済んだあともネットサーフィングしているのは、これから利用しようとしている人に気兼ねしてしまう。

ちなみに、昨年6月に立ち寄ったシンガポール・チャンギ空港では、当時ではまだホットスポットとして運用していなかったが、ITゾーンとして20数台の端末が自由に操作できる十分な空間があり、隣の利用者を気にすることなく、落ち着いて利用することができた。空港での待ち時間を有意義に使うことが可能である。

コンテンツの問題

実運用段階、あるいは実験段階のものも、ネットに接続できることが売りであるが、その場所でネットにアクセスできることを十分生かしきれていない。ミニストップなどはホットスポットオリジナルのコンテンツを用意しているが、果たしてそのためだけに利用する人がどれだけいるだろうか。例えば、米国のHiltonでは、ノートPCでなくても、無線インターネット接続されたPDAやWAP携帯電話で宿泊予約、予約状況確認、予約のキャンセルなどを行える。

I-modeが普及している日本において、インターネットアクセスの提供だけでどの程度の訴求力があるだろうか。メールに関して言えば、i-modeのほうが圧倒的に手軽で簡単である。更に、ADSL利用者が150万世帯(2001年12月末日現在)を越している現在、ノートPCを持ち歩くようなパワーユーザは自宅のほうが快適な環境が整っているであろう。

日本で定着するか?

実験から実運用フェーズへと移りつつあるわが国のホットスポットでは、PDAやノートパソコンユーザに対して、i-modeサービスを超えるものを提供しなければならない。無料インターネットアクセスは魅力的だが、無料サービスとしてアクセスポイントを広範囲に増やすには資金的限界があり、現に米国MobileStarはStarbucks店舗の無線アクセス提供のために資金難に陥っているようだ。現在の無料アクセスサービスは実証実験が多く、実験後も無料であり続ける保証は無い。

  • 広告モデル(将来的にはストリーミング)を導入して無料サービスを貫く、
  • ホットスポットならではのコンテンツを提供する(駅の乗り換え案内、ホテルの予約状況、施設案内等)、
  • オンラインゲームなどのノートPCをフル活用するエンタテインメントを提供する、
など、常にノートPCを携帯するようなモバイラーの心を引き付けるにはネットアクセス、プラスアルファが必要である。