自分だけのオリジナル放送局を楽しむために

携帯電話やPDAが高機能になったおかげで、今や音楽だけではなく、 映像も外で見られる時代になった。しかし、通信コストやクオリティの点で、 まだまだ映像を気軽に楽しめるとまでは行かない。 そうなると、現時点では音楽を楽しむくらいが関の山だが、 今一つ自由気ままに楽しめるとは言いがたい。

コストや手間がかかる

NTTドコモでは、以前からM-stage musicという、 PHSを利用した音楽配信サービスを展開している。 着信メロディのダウンロードも一種の音楽配信だろう。 PHS本体さえあれば、 自分の気に入った音楽をいつでも手軽に楽しめるというメリットはあるが、 やはり通信料金が気になってしまう。 64kbpsの通信速度では1MBのファイルをダウンロードするのに2分以上待たされることになる。 しかも、用意されたコンテンツしか聞けないのでは物足りなさが残る。

それならば自宅で録音して持ち歩けばよい。MDプレイヤーやMP3プレイヤーも小さく軽い機種が数多く出荷され、 5GBのHDDを備えたiPodならば1000曲を持ち歩ける計算になる。 また最近のPDAならばMP3やWMAの音楽再生もごく当たり前になりつつある。 しかし、そのためには音楽CDやエアチェックした音楽を圧縮・変換し、 それぞれのメディアに転送する手間がかかる。 iPodの1000曲は例外として、PDAで普通に持ち歩ける曲数はまだせいぜい50曲前後だろう。

外出中ではなく、屋内に限って言えば、自分の好きな音楽をデジタル化してアーカイブするのは、もはや簡単で当たり前となった。 これら自分だけのライブラリーを、どこでも気軽に楽しめたらいいのだが。

自宅をオリジナル放送局にする

音楽の世界では、実は以前からインターネット・ラジオが始まっていた。 インターネットへの常時接続、しかもブロードバンドが当たり前の昨今では、 通常のラジオ局と同様に、海外や“草の根”のラジオ局が、 コストを気にせず身近に楽しめるようになっている。

それならば、自宅のPCをオリジナル放送局にできないだろうか? ストリーミング・サーバ・ソフトウェアとしては、 RealSystem Server Basicが無料で利用できる。 外出中はPDAや専用プレイヤーで好きな曲を選んで再生するのである。 著作権の観点から厳密なアクセス制限の仕組みを考える必要はあるが、 一般的なMP3のエンコードレート(128kbps)は、もはや自宅で実現できない回線速度ではない。

問題は、これだけの帯域をもつ安定した通信手段を外で如何に確保するかである。

公衆無線LANアクセス環境に期待

第3世代あるいは第4世代携帯電話の高速データ通信も気になるところだが、 コスト面を考えるとやはり公衆無線LANアクセス環境に期待したい。 店舗街角では既に実験が行われており、 電車内での実験も行われようとしている。 既に普及しているIEEE802.11b(11Mbps)以外にも、 電波法の制限のためまだ屋外では使えないものの、既に通信速度54Mbpsを実現する機器も登場している。 このようなインフラが身近になれば、お仕着せのコンテンツではなく、 自宅のライブラリーから好きな音楽を外出先で選んで楽しめるのではないだろうか。

もっとも、iPodのように十分な曲数を持ち歩けるプレイヤーがより手軽になればこのようなニーズも薄れるかもしれない。 しかし、将来的には音楽だけではなく、自宅でアーカイブしている映像を帰りの電車内や出張先のホテルでも楽しみたいところだ。