電子政府は自らの業務改革から

本格化する電子政府

14日に開催されたIT戦略本部は、 e-Japan重点計画e-Japan2002プログラム を前倒しで実施していくことを決定した。
こうした計画の柱の一つが行政の情報化、すなわち電子政府・電子自治体の実現である。 平成14年度には全府省で、
申請・届出等手続の電子化のための共通的基盤システムを整備するほか、
行政情報の電子的提供、地方自治体の広域的システム基盤の整備などを推進する。 戦略分野に予算を重点配分し、
かなり遅れていた行政部門の情報化を進めよう、 ということであればこれ自体は歓迎できる決定だ。

避けたい「丸ごと電子化」

しかし、単純にITを導入するだけでは何の解決にもならない、 ということが身に染みて分かっている民間サイドから見ると、
この電子政府・電子自治体の構想はかなり危なっかしく映る。

電子政府で是非避けてもらいたいのは、「丸ごとの電子化」だ。 日本の役所は、末端部署の数だけ施策があり、 申請・届出制度がある、
という恐ろしく複雑かつ縦割り的な業務構造を相変わらず引きずっている。 これを、そのまま厳密に電子化しようなどとと考えると、
電子認証などの新たな仕組も入り、さらに煩雑になることは目に見えている。 例えば、「申請・届出等手続の電子化」などは、
そもそもそうした申請・届出は本当に必要なのか、 内容の簡素化・標準化はできないのか、
という議論を役所のなかでやってからにして欲しいのである。

顧客志向のFastLane

その点、米国の NSFが構築した
FastLaneという仕組は極めて出来がよい。 NSFは、何度か本コラムでも紹介しているが、
大学等の研究機関に助成金を出している連邦機関の一つだ。 FastLaneは、
インターネット上で助成金を獲得するために研究者が提案書を作成・提出し、 専門家がこの提案書を審査する仕組などを提供している。

FastLaneが成功したポイントの一つは、情報システム部長を中心に、 各部署の幹部から構成される検討チームをつくったことだ。
この検討チームが、研究者、研究者が所属する研究機関のスタッフ、 外部審査者などの「Customer Community」
とNSFの間の業務プロセスを思い切って簡素化することが先ず必要だと決断した。
自分達だけの都合ではなく、顧客サイドの視点で業務とシステムを再構築したのである。

NSFのように組織横断的に業務プロセスを見直す、 などということが、
ボトムアップに各部署の施策を集めることで機能してきた日本の役所にとってかなり難しいことは分かっている。
しかし、税金を投入して電子政府を作るというのならば、 まずここから手をつけるのが筋だろう。
この機会を逃すと、肥大化した電子政府システムが、逆に煩雑な業務構造の 硬直化を招く懸念さえある。

望まれる電子自治体のグランドデザイン

電子自治体の推進でも、懸念されることはある。 地方自治体がそれぞれ情報化を進めているが、
これで効率的なIT投資ができているのか、という点である。 各自治体が同じようなシステムを導入し、
さらにそれを個別に運用するだけの人材を確保するのは負担が大き過ぎる。 そうであれば、
自治体向け業務システムを運用するためのASPの導入を前向きに考えるべきだと思う。 将来の市町村再編などを睨めば、
システム統合などに有利なASPのスキームはもっと注目されて良い。 ただ、ASPに参加する自治体で、仕事のあり方をある程度そろえる、
といった調整が必要となり、こちらもあまり簡単ではない。

効果的な情報化を進めるには組織や仕事のあり方も見直すべき、 ということは民間サイドであればもはや常識である。
電子政府や電子自治体を掛け声倒れにしないためには、 こうした見直しに消極的であった行政の論理も当然変わらざる終えない。