
ことは大変なことだが、無償で続けることはもっと大変だ。 奉仕者にとって明確な効果や相手の笑顔など動機になるものが見つからなければ続かない。 この週刊コラムも、メイルで届く読者の方々からの声援や、 毎月増え続けているアクセス数がなによりもの励みになっている。
最近NPO(nonprofit organization)を始めとして ローカリティによる小さな市民活動が期待されているが、 その多くは財源を持たずボランティアの人々の奉仕の心に頼っているのが現状だ。 そんな中、地域交換取引制度、通称LETS(Local Exchange Trading Scheme)を導入して、 まったく新しい地域循環型の活動を実践しているいくつかの コミュニティ が日本にもある。
LETSは、従来通貨(日本なら円)にかわるコミュニティ内だけに通用する地域通貨単位を使う。 たとえば、希望が芽生える願いを込めて「シード(Seed)」という通貨単位を導入することにしたとする。 次に、単純労働時給を1,000シード(=1,000円)程度などと換算の目安を決める。 そして、メンバ各自ができること、してもらいたい願いをまとめて、事務局に登録する。 登録内容を基にメンバがお互い連絡し合い、内容と価格を決めて取引を行う。 日本では法律上通貨を勝手に発行することはできないので、 取引のプラス/マイナスを記入していく個人用通帳と、主催者側が管理する口座によって コミュニティ全体でプラスマイナス0に近づくように運営されるのが普通だ。
LETSの仕組みは遡れば170年程前になるそうだが、 20年程前に現在の形で初めてカナダで導入されたのをきっかけに いま欧米を中心に各地に急速に広まっている。

から始まるが、利子もないので貯蓄へのインセンティヴもなく、サービスを利用することが促される。 また、借金は「コミットメント」(関わりの深さ)だと考えられ、まったく負い目はない。 むしろ後にコミュニティへのサービス提供者として期待される人となる。 また、コミュニティのこれまでの取引額を公開することで 経済活動への参加の履歴から個人の信用性を判断することも可能だ。 たとえば借金をきちんと返すことでコミュニティとの信頼関係が厚くなるのだ。
こうした利点によって、LETSは従来通貨制度と併用しながら、地域のコミュニケーションを活性化し、 お互いが助け合ったり、生き甲斐を感じながら地域づくりができる仕組みとして注目されている。
しかし、LETSは利点ばかりなのだろうか。 たしかに、人のやる気や善意を前提にしたLETSは多少息苦しいところもあるかもしれない。 しかし、サービスを受ける側の人もボランティア制度に比べて気持ちが楽になったという感想も多いようだ。 また、地域通貨による税金逃れもできそうだがこれはまずい。 すでにLETSを納税対象としている国もあるのだ。 地域通過と従来通貨との両替も、LETSのゼロサム・バランスを崩す結果となるのでしてはいけないことだ。

と同じような機能を持っていることに最近気がついた。 LETSは通貨取引ばかりか、 個人や地域における「EnergyやEmotionの相互交換」もできるのかもしれない。 また、メディアもお金も血液のように社会を循環していることが健全だ。 その取引額やフロートしている額によって、市民活動の指標として捉えることができそうだ。
さて、これまでのLETSの話、一体ITとはどういう関係にあるのか。 実はこのようなことが社会の仕組みを変えてしまうIT革命のタネなのかもしれないと思ったのだ。 しかも、LETSはインターネットの精神やオープンソースコミュニティの運営方針と かなり類似点があるように思うのだ。
Webを使うことで、より簡単で、わかりやすく、軽く、バリアフリーに、 P to Pの取引のマッチングを行ったり、サーバによる口座の管理がもっとスムーズにできそうだ。 本来お金もメディアも、ただ貯め込んでいるだけでは何もならない。 LETSサーバを立ち上げたら、みんなでお金を借りることから始めよう!





参照
NHK出版『エンデの遺言—根源からお金を問うこと』河邑厚徳著