グローバル調達の脅威?

グローバルコンペティションによる陶汰

マーケットプレースによってグローバル調達が一般化すれば、厳しい価格競争のなかで自分達は陶汰されてしまうのではないか? こうした可能性について、部品供給会社の経営者の方から質問されることは少なくない。確かに日産が系列からの調達を見直し、ビッグスリーなどが立ち上げる世界最大規模の電子市場に参加するなど、多くの業界で電子市場を介したオープンな調達を取り入れる動きがある。米国の調査会社 Gartner Group の予想では、2004年までにオンラン取引は全世界で7兆ドル(約735兆円)に達し、そのうち40%が電子市場を介して取引されるという。過去の取引実績と信頼関係だけの上に胡座をかいていられるような時代が去ってしまった、という認識は正しい。

電子市場は万能ではない

しかし、最近の「IT革命」記事にあるような電子市場一辺倒の議論というのも、冷静に考えればおかしな話は多い。「市場」という以上、供給と需要の間に存在する何らかのギャップを埋めることで初めてその存在意義は出てくる。「価格」、「商品や取引相手の情報」、「時間」、「取引ロット」、「キャッシュフロー」、「信用」、「取引手順」、「取引条件」など、埋めるべきギャップの要因は幾つかあり得る。ところが、こうした要因を考慮したとしても、その有意性を説明できないような電子市場のプランというのは少なくない。こうしたプランは、インターネット上の膨大な利用者がアクセスしてくる業界ポータルサイトになることを想定していることが多いのだが、業界ポータルサイトになるのがそう簡単な話ではないし、そのためには先ず電子市場としての魅力が必要、という本末転倒なところもある。

価格だけが全てではない

多くの取引相手から安い商品を購入できる、という話もBtoCのオークションをそのままBtoBに持ち込んだ安直なところがあり、必ずしも調達先にニーズを捉えていないことは多い。確かに調達コストを抑えるのは重要であるが、業界全体が価格競争に陥っている状況というのはむしろ避けるのが健全な業界の力学である。新たなイノベーションが競争優位の源泉になっているような健全な業界であれば、企業の調達戦略も「オークション」だけで片付くほど単純なものではない筈だ。

こうした複雑な調達戦略にとって有効なソリューションを提供できそうな電子市場のプランがない訳ではない。また、インターネットのスケールメリットを活かして従来存在しなかったような「ニッチ市場」を作り出したり、やはり従来なかった流動性を生み出すことで「持たざる経営」を追求している企業ニーズを捉えられそうなプランもある。こうした電子市場は、今後とも注目していく必要がある。

電子市場の陶汰

以上のように考えてくると、利用者のニーズに適合する電子市場において、直ちに過当競争が起るようなことは、筆者には考えにくい。取引先のイノベーションや合理化に対して有効な提案を行える戦略的パートナーがビジネスチャンスを失うような電子市場は出てこないし、こうした戦略的パートナー同士を上手く結び付けられる電子市場ではないと、その電子市場自体が陶汰されてしまう。電子市場自体も、市場原理は容赦なく適用されるということである。