iモードの誤算

「また、つながらないなぁ…」と思ったのは、先日出張に行った帰りの新幹線の中。 ふと車内の電光掲示板を見ると、 昨日のiモードのトラブルがニュースになっていた。「また今日もトラブルか?」

最近は良きにつけ悪しきにつけ、iモード関連のニュースを目にしない日はない。 なぜこんなにもiモードは関心を集めているのだろう?

なぜここまで普及したのか?

私自身も約1年前からiモード利用者である。 とは言うものの、使う前はきっと使えないだろうと高をくくっていた。 メールは250文字しか使えないし、モバイルバンキングなんて誰が使うのか、 とさえ思っていたほどである。 しかし実際に使い始めてみると、意外と便利なことに驚いた。 これは私にとってはうれしい誤算だった。

便利さの最も大きな理由は手軽さである。 携帯電話だから常に持ち歩いているし、 満員電車の中でもケーブルをつなぐことなく片手で楽に扱える。 今までポケットボードをつないで10円メールをやり取りしていたのとは比べようもない。 車内で携帯電話とにらめっこしている人もよく見かけるようになった。 次に考えられる理由は、デジタル・コミュニティの浸透力だ。 知り合いが使っていて便利そうだから使ってみた、 社内の他の部署で使い始めたから合わせて導入した、 という仲間意識が普及に輪をかけたのである。 さらにこれに追随するように、有効なコンテンツが揃い始めた。 待ち受け画面や着信メロディの配信に始まって、 チケットやホテルの予約、オンライン・トレード、レストランの割引、 駐車場のリアルタイム空き情報と、 娯楽的なものから実用的なものまで百花繚乱である。 今では1万件以上のiモード対応サイトが登録され、 暇つぶしにはもってこいだ。

モバイル機器としての問題

しかし、もちろん問題がないわけではない。 利用者が爆発的に増えてしまったために、 サーバが悲鳴を上げて一時的にサービスを利用できなくなった。 ここ数ヵ月はひと月に100万人のペースで増えており、 おおざっぱな計算をすれば1秒に一人が加入していることになる(1日の営業時間を9時間、 毎日営業とした場合)。 これはNTTドコモも誤算だったに違いない。 いくら手軽な暇つぶし道具でも、つながらなければ単なる携帯電話に過ぎない。 必要なときに必要な情報を取り出せなければ、モバイル機器としては役に立たないのである。

さらにメールや文字を入力する道具として見ると、 入力するのが面倒だという声もよく聞かれる。 キーボードに慣れ親しんでしまった私自身も、 携帯電話本体のダイヤルボタンで入力する“作業”だけでひと苦労だ。 情報を受け取って見るだけの道具と割り切ってしまえばいいのだが、 それではモバイル機器としての魅力が半減してしまう。

これでは群雄割拠するモバイル・サバイバル時代の覇権は奪えない。

問題解決?、そして次なる誤算?

そこでNTTドコモは、まずつながりにくい問題を解決するために、センタ設備の増強を計画している。 文字入力のわずらわしさは、 小型の専用キーボード(iボード)によって一応の解決を図っているが、 iモード本来の手軽さが失われてしまうのは少々残念だ。 PDAのように文字入力を補完できるようになれば文字入力のわずらわしさも問題にならなくなるに違いない。 あるいは、文字入力の手間自体は変わらないが、 学習機能付きの日本語変換システムを搭載するという次善策もある。

弱点を徐々に克服しつつ、利用者のニーズに着実に応えてきたiモード。 対抗するライバル会社のサービス(J-SKY,EZaccess,EZweb,H”)と戦いつつ、 このまま勝ち続けるか、 それともPDA+無線という新興勢力に敗れるか。

果たして、次なる誤算は何だろうか?