「サービス・プロバイダ」花盛り

2000年問題が無事に片付いたせいだろうか、今年にはいって、 新しいネットビジネスのニュースを聞かない日はない。 大手もベンチャーもこぞってネットビジネスに参入しようとしている。 ここで、参入しなければ完全に時代に乗り遅れてしまうかのようだ。 巷には、e のつくビジネスモデルがあふれかえっている。

ネットビジネスの自然淘汰と適者生存

一方で、4月にはいってから、ネット株を中心に株価の暴落が起こり、 ネットバブル云々というような議論も起こっている。 アメリカの Forrester Research 社は、 「2001年にはほとんどのドット・コム小売り業者が姿を消す」という レポート をまとめているが、確かにマーケットの絶対量を考えれば、 現在のビジネスサプライは明らかに過剰になりつつあるようにも見える。 ブームにのって、数えきれない程のネットビジネスのモデルが生まれたが、 それらが徐々に選別されつつあるということだろう。

こうした流れは、進化論でいうところの「自然淘汰による適者生存」 を思い起こさせる。 次々と新しく生まれるビジネスモデルは、 有限のマーケットというリソースを奪い合い、 そしてうまく適応できるもののみが市場の評価を得て、 生き残り、繁殖していくわけである。 ネットビジネスの特徴のひとつは、いうまでもなくボーダーレス化にある。 そこには物理的、地域的な制約がない。 近いからとか、顔馴染みだからとか、たまたま通りかかったからとか、 そういう理由で、ネットワーク上で買いものをすることはないのだ。 だから、ネットビジネスの自然淘汰は従来型ビジネスに比べて非常にシビアだ。 同業他社に比べて、特徴がなく、明らかに劣るところは、 あっという間に淘汰されてしまう。

では、個体としての優位性を保っていれば、 生き残れるだろうか ? オンラインのホテル予約システムの先駆けである 「旅の窓口」 の小野田純氏は、 CNET Japan のインタビューの中で、同業他社の参入について聞かれて 「むしろ望ましいこと」とコメントしている。 巨大な1社が独占的に市場を席捲するよりも、多くの企業が参入し、 市場における地位を確立することが長い目で見れば重要、というわけだ。 最近話題になっているビジネス特許による囲い込みとは相反するようにも見えるこの考え方は、 個体群としての自然淘汰にも通じるところがある。

ネットビジネスはどう進化するか ?

ネットビジネスはこれからどうなっていくのか ? これは株投資家ならずとも知りたいところだ。 「残念ながら進化というのは予測不能なのです」 などといってしまっては身もフタもない。 ネットビジネスに限らず、従来、 経済モデルや文化の流れを進化論と結び付けて説明しようという研究が行なわれてきた。 こうした研究に対しては、予測ができなければ実用的な意味はないのではないか、 とする向きもあるが、 単にアナロジーだけでも発想のヒントになることはありそうである。 例えば、生き残るために強さだけを求めて、 あくまで百獣の王ライオンを目指すやりかたももちろんあるが、 寄生虫やカッコーのような生き方もありうるわけだ。 巨大ショッピングモールに棲みつく寄生虫モデルなんていうと、 かなり聞こえは悪いが、立派なビジネスモデルだ。

ネットビジネスでは、今後も、 混沌とした中から新しい進化の方向性が生まれてくるだろう。 これは、消費者にとってみれば、喜ばしいことではある。 ただ、生物は、誕生以来、最適な進化を遂げてきたわけではない。 というより、むしろ遠回りをしてきた。 ずばぬけたネットビジネスのアイデアや、 数十億円を投じた大規模なシステム投資も、 既存の経済活動や技術と親和性がなければ消え去る運命にあるだろう。 「ちょっとだけ便利だ」というのが、 実は次世代のビジネスモデルのキーワードなのかもしれない。