パソコンに限らず、身の回りの多くの機器には時計機能がついている。残念なことに、それらの時計がすべて同じ時刻を表示していることはまず無い。時が経つにつれて、あるものは遅れ、またあるものは進んで、その差はどんどん広がってゆく。これらの時計を自動的に合わせる手段はないものだろうか?
パソコンの時計が狂っていると…
最近「ホームページの更新ができなくなった」という相談を受けた。特定のファイルだけ、どうしてもサーバに送られない。調べてみると、ファイルの日付が1年前のものになっていた。パソコンの時計が丸1年狂っていたわけだ。
1年も狂うというのはさすがに誰かが設定を間違えたのだろう。しかしなぜ気がつかなかったか。
たとえば Windows 98 のタスクバーに「時計を表示」することができる。しかし通常は時刻(時・分)しか表示されない。年を表示するためには、時刻表示の上にマウスカーソルを合わせる必要がある。カレンダーを表示すれば曜日が違っているから気がつくはずだが、スケジューラなどを使っていなければカレンダーを表示する機会もないだろう。
インターネットの時計合わせは簡単
インターネットにつながっているパソコンなら、時計を合わせるの簡単だ。NTP (Network Time Protocol) という時計合わせのプロトコルがあるので、正確な時刻をいつでも引き出せる。
時計メーカの Swatch 社が考案したインターネット・タイム(Internet Time)というものもある。インターネットのボーダレス性を強調したスローガン(No Time Zones, No Geographical Borders) を推進すべく、ビート(beat)という時刻単位(記号は@)を提唱した。秒単位では1日86,400秒だが、ビート単位では 1000 ビートになる。時刻は全世界共通でSwatch 社のあるスイス北西部ビール(Biel)を標準時にしている。たとえば @500 はビールの 12:00、東京の 20:00 頃になる。
インターネット・タイムは、今のところはパソコンのデスクトップに表示したり、ホームページに表示する機能しかない。そのうち時計合わせにも使えるようになるかもしれないが、1 ビートは約1分26秒なのでかなり大雑把だ。
パソコン以外はどうするか
では、目覚まし時計やビデオデッキの時計はどうやって合わせよう。普通はテレビの時報や NTT の 117 を聴いて手動で合わせるが、自動補正機能の付いた機器もある。
その代表例が「電波時計」を活用したもの。電波時計は、郵政省通信総合研究所が提供している標準電波を使って時刻合わせをする時計だ。今年の時の記念日(6月10日)に電波の到達範囲が大幅に広がったため、日本中どこでも利用可能になった。
テレビやラジオの時報を使って時刻合わせをする製品もある。VTR の予約録画のためには時計が正確であることが求められるので、自動的に合ってくれればとてもうれしい。
すべての時計を合わせるために
パソコンや時計、テレビやVTRの時計の合わせる方法はわかった。それでは、その他の家電製品(電子レンジや炊飯器など)はどうしたらいいのだろう。時刻合わせのためだけに、インターネットに接続したりテレビのアンテナを取り付けることはありえない。
そこで期待したいのがホームネットワークである。さまざまな取り組みが行われているが、うちの一つである HomeAPI では「新しいケーブルの要らない(No new wire)ネットワーク」を提唱しており、電力線の利用も含まれている。これならば炊飯器もネットワークに参加できそうだ。あとはインターネットで時刻合わせをしたパソコンなどに合わせるだけだ。
本文中のリンク・関連リンク:
- NTP
(Network Time Protocol)のサーバ
NTP に関する最新情報を提供している。
クライアント向けのソフトウェアもたくさんある。 - 郵政省 通信総合研究所の「日本標準時を表示するページ(Java script版)」
自分のパソコンの時計がどれだけ狂っているかを確認できる。ただし、ネットワークの遅延があるのであまり正確ではない。 - Swatch
社
インターネット・タイムの解説がある。
アップル社のホットニュースにも掲載された。 - 郵政省通信総合研究所の標準電波に関する報道発表
1999年6月10日(時の記念日)、電波の到達範囲が大幅に広がった - 電波時計各種
- シチズンのアテッサ エコ・ドライブ 電波時計
- カシオのWAVE CEPTOR
- テレビの時報に合わせるビクターのビデオ HR-VX100
「新ぴったりクロック」機能 でテレビの時報に合わせる - HomeAPI
ワーキンググループ
- HomeAPI ワーキンググループ (リンク先不在のためリンク削除 … 2002.02.13)
1999年3月の White Paper で「新しいケーブルの要らない(No new wire)ネットワーク」を提唱している。電話線、電力線、TV ケーブルなどを使うらしい。