回覧は HTML で

このコラムをインターネットで見ている読者で 「HTML」という単語を聞いたことがない、という人はいないだろう。 HTML とは Hyper Text Markup Language の略で、 ホームページを書くための言語だ。 もちろん、この文章も HTML で書かれている。

HTML の詳しいことを知りたければ、本屋に 山ほど 並んでいる参考書にお任せするとして、 ここでは HTML をめぐるあれこれを考えてみたい。

HTMLの意味の変化

もともと HTML は、文章に構造を与えるものだった。 文字だけの文章に「タグ」と呼ばれるキーワードを埋め込んで、 ハイパーリンク(他の文章に飛んでいく仕組み)や、見出し、段落、箇条書き、 図の挿入、などの構造を、文章に与えることが、そもそもの目的だ。

初めはシンプルな構造しか与えられなかったが、 その後、Netscape や Internet Explorer などのメジャーなブラウザが、 それぞれ独自にタグを増やしていった。 このため、Netscape で見られたページが IE では見られないといった混乱の時期を迎えたが、 現在、 HTML の第4版 (HTML4.0)で やっと落ち着いてきたようだ。

マルチメディア指向で発展したHTML

HTML の進化とともに HTML の表現力は高まってゆき、 いまや HTML はページ記述言語としてとらえたほうが自然なまでに変ってしまった。 アニメーションやビデオを流す ShockwaveQuickTimeを 張りつけられるようになり、HTML はマルチメディアも取り込んでしまった。 ついには、 Java アプレットやJavaScript のようなプログラム言語も利用できるようになり、 今では Web アプリケーションという分野までも確立してしまう。 まさに百花繚乱、何でもアリとなっている。

見映え重視の功罪

一方で、表現力の追求にこだわりすぎるあまり、 HTML 本来の役割である文書構造がないがしろにされているケースも多い。 各種のプラグインを駆使したページや、 文字が入っていないイメージだけの文書などだ。 そんなページを非難する声もある。

例えば、HTML 文書を朗読することでバリアフリーを目指す IBM の ホームページ・リーダーを利用できるようにするには、 図表や見映えよりも文章を大切にすべきだ。 そのための HTML チェッカーもあり、IBM のバリアフリー関連のページでは HTML の文書を作成する際にちょっとした配慮をして欲しいと呼び掛けている。

標準データフォーマット

HTML がデザイン重視となったことの良し悪しはともかく、 HTML は多くの人に受け入れられたようだ。 日本初の Java ワープロとして一部で脚光を浴びている、 ジャストシステムの 「一太郎 Ark for Java(仮称)」が採用しているデータフォーマットは HTML だ。 この7月に発売予定のマイクロソフト 「Offece 2000」も HTML 対応を謳っている。 このように、HTML が標準データフォーマットに採用されるようになってきた。

ところで、実は私はLynx (リンクス)というブラウザをよく使う。 とても地味なブラウザで、プラグインや Java アプレットはおろか、 GIFイメージすら表示されない。 表示できるのは構造化された文章だけなのだ。 私がアクセスする情報源は文章が中心なので、 いまのところ、たいていは Lynx でこと足りている。 このように、 文字だけの環境から、アニメーションを駆使したビジュアルな環境まで、 幅広く対応できる柔軟さを HTML は持っている。

最近、書類がメールの添付ファイルで送られてくることが多くなった。 そこで提案。 通達や添付資料は、是非、HTML の文書にしていただきたい。 だって Word や Excel のファイルを送ってもらっても、 私の UNIX ワークステーションでは読めないのだもの。