小型リムーバブルメディアの使い道

リムーバブルメディアと言うと真っ先に思いつくのはフロッピーディスク だろう。Apple 社の iMac には搭載されなかったが、多くのパソコンにはフロッ ピーディスクドライブがついている。このメディアはちょっとした文書ファイ ルを他人に渡すときなど重宝する。しかし、今のコンピュータ環境を考えると、 1.44 MB という容量はいかにも少ないし、そのわりにサイズが大きいのでかさ ばる。特に PDA などの小型機器で使うには適さない。

小型リムーバブルメディアの群雄割拠

PDA やデジタルカメラの普及にともなって、小型リムーバブルメディアが 発達してきた。コンパクトフラッシュやスマートメディアがその代表だ。その 他にもメモリスティック、マルチメディアカードなどを用いた製品も登場して いる。最近はハードディスクと同じ構造を持つメディアも登場しているため、 各メディアが目指す未来像が分かりにくくなっている。

  方式 容量 サイズ 速度 メディア価格
コンパクトフラッシュ フラッシュメモリ 48MB 15g, 36mm x 43mm x 3.3mm 最大6MB/sec 3万円
スマートメディア フラッシュメモリ 32MB 2g, 37mm x 45mm x 0.76mm 1.7MB/sec 1万5千円
メモリスティック フラッシュメモリ 8MB 4g, 50mm x 21.5mm x 2.8mm 2.45MB/sec 4,000円
MMC(マルチメディアカード) フラッシュメモリ 16MB 1.5g, 32mm x 24mm x 1.4mm 2MB/sec 8,000円(8MB)
マイクロドライブ 磁気ディスク 340MB 20g 42.8mm x 36.4mm x 5.0mm 最大6MB/sec
Clik! 磁気ディスク 40MB 10g, 54.9mm x 50.1mm x 1.95mm 最大 1.22MB/sec

そこに何を載せるのか

小型リムーバブルメディアの弱点は容量である。小型であるがゆえ、どう しても MO や DVD のような大容量は望めない。そこで、そこにどのようなデー タを載せるかが普及のカギを握る。パソコン用メディアとしてはさまざまな形 式のファイル(ワープロ、画像など)があるが、それ以外の専用機器での使われ 方が興味深い。

・静止画も撮れるビデオカメラ

静止画をリムーバブルメディアに格納できるビデオカメラがソニーとビク ターから発売されている。メモリスティック(ソニー)とMMC(ビクター)の違い があるが、どちらも 640×480 ドットサイズの静止画像を JPEG 形式で圧縮し て記録する。記録可能な量は 8MB のメディアで 100 枚程度である。子供の運 動会を撮るのには十分な容量だろう。

・動画像も記録できるデジタルカメラ/ビデオカメラ

リムーバブルメディアに動画を記録できるタイプの製品もある。サンヨー のデジタルカメラでは、スマートメディア 16MB に 160×120 ピクセルサイズ で 120 秒の動画像(MotionJPEG) が撮影できる。近日発売予定のシャープのビ デオカメラは、スマートメディア 16MB に 160×120 ピクセルサイズで 5 分〜 1時間(品質によって異なる)の動画像(MPEG-4)が撮影できる。

・大流行の MP3 プレーヤー

MP3 プレーヤーでもリムーバブルメディアが利用されている。例えば Saehan Information Systems 社の MPMan ではスマートメディアや Clik! を、 PONTIS 社の MPlayer3 では MMC を採用している。いずれも、8MB のメディア で 10分 〜 30 分程度(品質によって異なる)の音楽が格納できる。

もっと大容量な小型リムーバブルメディアが欲しい

静止画像、動画像、音楽などのマルチメディアデータを小型リムーバブル メディアで取り扱うという方向性は、ある程度成功し、製品としても普及しつ つあるようだ。しかし、ユーザサイドの高品質、長時間へのニーズは、現時点 での容量ではとても満足できない。

動画像ならば、例えば DVD と対抗して 2 時間の映画を見られるくらいの 小型リムーバブルメディアが欲しい。MPEG-4 で圧縮すると言うのは一つの解 決方法ではあるが、出来ればより高品質で見てみたいものである。

ROM (Read Only Memory) のアナロジーとして ROS (Record On Silicon) という用語がある。ここで取り上げたメディアとは異なり、書換え不可能なメ ディアで、主にコンテンツ流通メディアとして注目されている。ROS を含めた フラッシュメモリを用いたリムーバブルメディアは、稼働部がないため、振動 などの多い環境でも問題なく利用できる。ハードディスクや CD-ROM などとは 異なり、生活環境に密接した情報家電などの組込み型システムへと適用範囲が 広がってくる。より大容量の小型リムーバブルメディアの登場とともに、マル チメディアコンテンツの流通を含めて、新しいアプリケーションの開拓に期待 したい。