マウスは嫌いだ。すぐにゴミはたまるし、 いちいちキーボードから手を離さなければいけないし、 画面上の小さなボタンにカーソルを合わせるのも面倒だ。 どうして、こんなに使いづらいマウスがいまだにメジャーなのだろう。
ポインティング・デバイスあれこれ
それにしても、 ポインティング・デバイスはずいぶん種類が増えた割に、 さっぱり使いやすくならない。 特にノートPCのアキュポイントやトラックパッドなどは、 無理に小さなスペースに押し込めたせいで操作性は最悪だ。 その中ではトラックボール系 は使いやすかったのだが、最近消えてしまったのが残念だ。 ホイールマウスや スマートポインターII はスクロール機能がウリのようだが、 基本的にはマウスと同じなので、あまり便利になったという程でもない。
マウスを越える3次元インタフェース
マウスではしょせん2次元しか動かせない。3次元にすればもっと使い方が広がるはずだ、 と考えられたのが3次元マウスである。 バーチャル・リアリティでは、 最も普及しているペンタイプの他に、 指先に反発力を感じるタイプや、 XYZの他に傾きや回転まで同時に入力できる6自由度タイプなどが使われ始めている。 最近では、空中で手を動かすだけでよいところまで来ている。
マイクロソフトは昨春、 『クローム』と呼ばれる3Dアニメーション技術を大々的に発表した。 奥行きのある3次元デスクトップや、ウインドウを回転したり、 斜めから見たりするデモを見せ、Windows2000の夢をかきたてた。 ところが、半年後になぜかあっさり引っ込めてしまった。 理由はいろいろ言われているが、 結局のところウインドウやアイコンをクリックする以外に使い方がないので、 派手な見かけの『クローム』メッキがはがれてしまったというのが真相かもしれない。
マウスより十字キー
入力デバイスと画面表示はコインの表裏だ。 ウインドウだけならマウスで十分過ぎる。 本当は、複雑な操作を適当にまとめてヒョイっと実行したり、 本のページをパラパラめくりたいのだ。 そんなアナログな操作を自在に使える入力デバイスがある。
それが、ファミコンから脈々と受け継がれてきた『十字キー』なのだ。 意外な印象を受けるかもしれないけれど、 たった4つの方向キーと2〜3個のボタンで、 RPGや格闘技の複雑な動きをこなしてしまう操作性は、 パソコンのもどかしさと比べると驚異的というしかない。
この秘密はパソコンにはないゲーム独特の「ルール」にある。 ウインドウズの画面には、 せいぜいボタン、メニュー、スクロールバー程度しかない。 ところが、ゲームでは、キャラクターが止っているか動いているかによって、 方向キーの意味を変えて、 複雑な動きをシンプルなデバイスで入力できるようにした。 つまり、ウインドウズのように画面上にごちゃごちゃ「ルール」を作るよりも、 局面ごとに操作を限定して入力を簡単にする方が、素早くそして複雑なことが できるという発想の転換といえそうだ。
世界標準の条件
マウスやキーボードなどの入力デバイスは、多少覚えるのが難しくても、 世界中で何千万人のユーザがすでに使えているという事実はとても重要だ。 おかげで、メニューやボタン、スクロールバーは特に説明しなくても、 どうやって使えばよいか皆知っている。その意味でマウスはしばらくは安泰だろう。
でも、子供達の間では、 十字キーそしてジョイスティックは世界で一番使われている入力デバイスだ。 ファミコンからドリームキャストまで、 ゲームボーイ等も含めればすでに数千万台が発売された。 みんな数百時間の訓練を終えて、自在に使いこなせることは明らかだ。 そして何より重要なことは、入力の「ルール」をすでに共有していることである。
彼らが大人になる21世紀には世界標準デバイスになっていても不思議はない。 ということは、 3Dスティックでマリオと走り、 十字キーでサラと戦えない大人達は、 キーボードが叩けず恥ずかしい思いをしてるオジサン達と同じになってしまうのか。
本文中のリンク・関連リンク:
- ロジクールのトラックボール 『トラックマン』 は場所もとらないし、ゴミもたまりにくい。 『ホイールマウス』 の方は各社が発売しているが、大宣伝するほどのものでもないような。
- パナソニックの Let’s noteに搭載された 『スマートポインターII』 はトラックパッドの中では高機能だ。