究極のワイヤレス

日本語で「無線」というと電波(radio)による通信のことを指す。 字面のとおり「線が無い」という意味の言葉は、 英語では wireless となるのだが、 日本語の「ワイヤレス」は辞書を引くと「無線」という意味に限定されて使われることが多いようだ。 ここでは、ワイヤレスを広い意味に捉えて、 「線が無いこと」とコンピュータ/コンピューティングとの関わりについて、 いくつかの話題を提供しようと思う。今回は、ワイヤレスマイク、 テレビのリモコンなどと同じように生活に密着している、 携帯電話を使ったモバイルコンピューティングの話。 さらにその派生形として衛星インターネットにも触れる。

進化する携帯電話

ワイヤレス通信といえば、まず一番に携帯電話が思い浮かぶだろう。 当初は軽量化や音質の向上を目的にしてきたが、 今はそれらの目的はおおよそ達せられて、 多くの機能をいかに盛る込むかを競う時代を迎えている。 しかし、これは音声通信を基準にした話であって、 コンピュータを使った情報通信を目的とした場合には課題はまだまだたくさんある。

今現在もっとも必要とされているのは言うまでもなく通信速度だろう。 携帯電話では 9,600bps (Dopa (DoCoMo Packet) 利用時には 28.8Kbps)、PHS では PIAFS (PHS Internet Access Forum Standard) PIAFS (PHS Internet Access Forum Standard) 対応時に 32Kbps (64Kbps は実証実験中)だが、マルチメディアデータをやり取りするには通信速度が貧弱過ぎる。

高速通信を可能にする次世代型携帯電話方式に IMT-2000 (International Mobile Telecommunications 2000) と呼ばれるものがある。最大 2Mbps の速度を持つため、 携帯テレビ電話も実現可能だ。 2001 年に事業開始が予定されているので、それほど夢のような話ではない。

ダウンリンクは速い衛星インターネット

双方向の高速通信を実現しようと思うと携帯電話を高速にしなくてはならないが、 ネットサーフィンするのなら、衛星通信を利用する方式が現実的かもしれない。 ネットサーフィン時にはサーバ→クライアント方向(ダウンリンク)の通信量が圧倒的に多いので、 アップリンクは従来の携帯電話程度の細い線を使い、 ダウンリンクに衛星からの通信を使うわけだ。 日本ではDirecPC 系のダイレクトインター ネット社のターボインターネット(最大 400Kbps)や、 1999年1月25日にサービスを開始したSKY PerfecPC!系のNTT サテライトコミュニケーションズ社の MEGA WAVE(最大 1Mbps)が利用可能である。 ダウンリンクだけとは言え、この速度は現時点ではとても魅力的だ。 これらのサービスは現時点では衛星受信用の大きなアンテナが必要だが、近い将来、 携帯可能な程度にまで小型化されれば、次世代型携帯電話を脅かす存在になるかもしれない。

さらに、次世代のインターネット衛星通信サービスとしては、 Teledesic社のサービスがある。 Microsoft 社の Bill Gates 氏が投資していることでも注目を集めたが、 2003 年のサービス開始時に予定している性能はかなりのものだ。 実現方式の制約からモバイルには利用できないそうだが、 大量の低軌道衛星を使ってダウンリンク 64Mbps を実現し、 しかも料金はとても安いらしい。 開始時期が少し先なのが気にかかるところではあるが、 ぜひとも実現してもらいたいサービスである。

電波ばかりがワイヤレスじゃない!(次回予告)

今回は電波系の話に終始したが、ワイヤレスは電波ばかりではない。 光や音声などを利用した方が優れている場合もある。 次回は、主に赤外線通信に関わる話題を提供しよう。