バージョン番号の謎

昨年暮、広辞苑のバージョン5(第5版)が刊行された。今回は、
ソフトウェアのバージョン番号にまつわる話題をいくつか紹介してみよう。

メジャー番号とマイナー番号

ソフトウェアの多くは、とくにフリーソフトウェアの世界では、 プログラムの特定に名前とバージョン番号を用いる場合が多い。
そのバージョン番号は、X.Y あるいは X.Y.Z といった二つもしくは三つの数字の組合せで表現されることが一般的だ。
頭の番号をメジャーバージョン番号、 二つめ以降の番号をマイナーバージョン番号といい、通常、 おびただしく機能が増えたり、
はなはだしい変更がなされた場合にはメジャー番号が繰り上げられる。 それに対し、細かな修正だけが加えられたバージョンアップの場合には、
マイナー番号を増やすだけにとどまる。

バグ修正をまとめた程度のバージョンアップでは三つめのバージョン番号が使われることが多い。
あるいは最後尾にアルファベットで版を指定することもある。 いわゆる、いろは順、だ。 バグを直すことを「パッチをあてる」と表現するので、
パッチレベル、と呼ぶさらに細かな番号が付け加えられることもある。 例えば、バージョン3.5パッチレベル12、というように。

最近マスコミでも脚光を浴びつつある Linux
のカーネル(本体部分)
は、安定志向のバージョンと、 先進的な開発者向けバージョンの二系統で進化している。
前者はシステムが不意に停止しないことを目指し、 先進機能は盛り込まない代わりに安定性を重視している。
他方、後者は安定性を多少犠牲にしてでも先進機能を盛り込むことを優先している。 その区別にマイナーバージョン番号が利用され、
その番号が奇数か偶数かで、二つの系統のどちらであるかを区別しているのだ。
1999年1月現在、2.0が安定版、2.1が開発者向けバージョンで、 安定版の新しいバージョン公開に向けて、 2.2系列の評価版が公開されている
(この原稿を執筆している1月25日、ちょうど2.2.0の正式版の公開が 予定されている)。

バージョン番号が刷新されるとき

大きな変更が加えられたときに番号が繰り上がるメジャー番号が、変更に伴い、
一見、小さくなってしまうといった奇妙な現象が起こったことがある。

サンマイクロシステムズのワークステーション用 Unix OS は、 その昔、SunOS 4.1.x
と呼ばれる系列
が広く使われていた。 ところが、ある時点で OS の仕様ががらりと変更され、 その変更に伴って名称も SunOS
4.1.x から Solaris 2.0 に変化した。 実は Solaris とは、SunOS にウィンドウシステムの
OpenWindows などを組合わせたものの総称である。

  1. SunOS 4 はあるバージョンから Solaris 1.x の一部だった。
  2. Solaris 1.1.2 がバージョンアップして Solaris 2.0 となった。
  3. したがって本質的には Solaris 2.0 は SunOS 5.0 だ。

とまあ、こういうからくりだったのだが、 いつの間にか Solaris という名前が SunOS に取って代わって広まった。
それで少々面食らった者も多かった、というわけだ。

ところでその Solaris だが、昨年暮、2.6 が修正されて 2.7 に変わるやいなや、
いきなりマイナー番号がメジャーへと昇格して Solaris 7 という名称になってしまった。時を同じくして、 サンが提供する Java
の開発キットである JDK も、JDK 1.1 から Java 2になった。

Solaris は 2.7 から 7 へ変化し、Java は 1.2 から 2 へ変化と、
これまでの常識をくつがえすリニューアルを続けたサンマイクロシステムズの 一方で、マイクロソフトは既に Windows3.1 から
Windows95、Windows98 へと、 旧来のバージョン番号表示を表に出す名称をやめている。
ソフトウェアとはやや事情が異なるものの、アップルの iMac にもA型とB型が既に存在する(新型 iMac が出る以前に、
じつは密やかなバージョンアップが行われていた)というし、 細かな変更を表に出さないようにする戦略が昨今の流行か。

2000 という番号は不吉

さて、マイクロソフトの次の OS は、Windows2000 だという。 このことに関してコラムニストの Dvorak
氏は、PCマガジンに 「Windows2000の不吉な運命」
というタイトルで興味深いコラムを書いている。 いわく、ソフトウェアの名前に2000という名前をつけるのは縁起が悪いそうだ。
その真偽は定かではないが、やはり西暦2000年問題を連想させるのは否めない。

対して、 ピンクのくまがメールを運んでくる愛くるしさで大評判となったポストペットの新バージョンの名称は、 PostPet2001という。その実体は
PostPetバージョン2.0である。 夢を与えるソフトウェアだけに、イメージが大切だ。