画像・映像はどこまで残るの?

個人的な話で恐縮であるが、先日高校時代の同窓会が開催された。 当時の映像を探してみたところVHSのテープが発掘され、アナログ映像が低画質ながらも再生することができた。高校卒業後、既に20年を超える年月が経っているものの、10年ほど前に作成したDVDについても再生することができた。メディアとしての寿命はまだ残っていたものの、VHSの再生環境は今やほとんど残っていないのが実情だ。メディアよりも再生機器等の環境を維持する方が難しいことを体感した。

無制限ストレージの登場

一方で、今やクラウドストレージサービスは無料で数GBを使えるようになり、条件によっては容量無制限に使えるサービスも生まれている。これらのクラウドサービスでは、一般の利用者には広告を見せることで無料でサービス提供し、一部のヘビーユーザには有料会員としてより容量の大きなサービスを提供している。いわゆるフリーミアムモデルでコスト負担をしてもらう方法が一般的である。

単体のハードディスクの容量が大きくなりビット単価は低下しているとはいえ、容量が無制限に利用できる仕組みはどうなっているのだろうか。一般的には、ハードディスクが多数並ぶストレージシステムを想像するが、実態は必ずしもそうではないようだ。データを格納するハードディスクを常時通電した状態で保管する場合、5年間のTCO(Total Cost Ownership: 総保有コスト)はハードウェアの機器費だけではなく、電気代の影響も大きいというレポートもある。そのため、電力消費が少ない磁気テープや光ディスクを使っている模様だ。

Googleが提供するサービスでは、利用者から集めた画像データを人工知能の一つの手法であるDeep Learningを活用して写真を自動分類してくれる。写真を一枚ずつ何が写っているのか確認して手作業でキーワードを与える必要はなく、自動的に写っているものや場所、顔を認識し、キーワードで検索できる仕組みを提供している。利用者が預ける写真は、一般に本人や関係者以外にはあまり価値がないにもかからず、多数のデータを集めることで事業者側にも価値が生まれたと考えることができる。

無料ストレージの限界

このようにクラウドストレージサービスの多くは、無料で使える容量が拡充される一方で、サービス停止やサービスレベルを下げるサービスも増えている。最近では、GoogleのPicasa(写真管理サービス)の終了や、Yahoo!ボックス(ストレージサービス)のPC用アプリの提供中止がアナウンスされた。MicrosoftのOneDrive(ストレージサービス)では、無料で使える容量を15GBから5GBに縮小するなどの動きも見られる。

ユーザ側のネットワークの通信速度が向上したことで大容量データを保管するケースが増えており、無制限容量に対して所有する映画のシリーズや、撮影した大量の映像データを残しているケースがあるという報告もある。そうしたサービス提供者の想定を超える一部の利用者のために、Google Photosでは、無料では高画質の映像を無制限に保管することはできず、有料契約が必要となっている。

また、現在無料で提供されているサービスも、いつまで無料のままサービスが継続されるのかは不明だ。サービスを止めることはないにしても、ある日無料で使える容量を大幅に減らしたり、無料枠を超える利用者に対して強制的に有料とすることもありうる。

残したくないのに残ってしまう

ところで、Twitter等のSNSで気軽に出した写真等のコンテンツが第三者により無制限にコピーされて、後々まで問題になるケースもよく知られている。インターネットで公開されたコンテンツは消せないという意味で、デジタル・タトゥーと呼ばれることもある。消したくないコンテンツは保管するコストをかけないと残らないのに、消したいコンテンツは消せないというジレンマが発生している。

例えば、無罪あるいは不起訴になった人でも、警察に逮捕されたりニュースで名前が報道されることで、個人名に対して好まないキーワードが結びつけらるケースもある。実際に、そのようなコンテンツの削除を求めて裁判で争った結果、検索サービス事業者に削除させる対応を勝ち取った事例がある。現時点では、欧州で規定されている「忘れられる権利」と同様の権利が、日本人・日本向けサービスに必要なのかどうかは議論の余地がある。

長期間残すことによるデータの価値やライフサイクルについては、以前にも当コラムで示したところである。個人が保有したり預けたりする画像・映像データが増え続ける中で、データを預ける際には、長期に残すべき画像・映像なのか判断した上で、保存にかかるコストや削除を含む管理方法も考慮する必要があるだろう。