ビジネスインテリジェンス(BI)というキーワードが登場して久しい。しかし、BIを本当に活用できている企業がどれだけあるだろうか。BIが今ひとつ役に立たないと感じているならば、それはシミュレーションできていないからかもしれない。
分析すれば意思決定できるわけではない
BIツールは企業の意思決定をサポートします、という謳い文句の下、さまざまな製品群がリリースされている。
企業内に散在する多数のデータベースの情報をデータウェアハウスに集約し、経営状況を多様な角度から分析できるのがBIである。重要業績評価指標(KPI)を算出し、企業パフォーマンス管理(CPM)を実践することだ。最近では、美しいグラフを瞬時に生成できるリッチクライアントも登場している。日々の経営状況が一目で分かりますという訳だ。
しかし、自社内にあるデータは過去でしかない。それを受け取り意思決定するのはあくまで人間である。参考にはなるが、販売計画は一体どれだけ修正すればよいのか、あるいは、売上の落ち込みを改善する施策はどれを選べばよいのか、といった疑問には直接答えてはくれない。
もっとも経営者が業績の悪い部署をいち早く発見して、ハッパをかけるにはとても役に立つのは確かであるが。
意思決定とは予測に基づく選択である
意思決定の鍵は予測にある。計画を立案したり改善策を選定するということは、いろいろなケースで見通しを立て、それらを比較検討して決定することに他ならない。見通しを立てる、すなわちシミュレーションして予測することである。このことはBI業界ではしっかり認識され、What-if分析や収益シミュレーションなど、将来を予測評価するためのツールもBIの一部として提供されつつある。
しかし、実際にきちんとしたシミュレーションに基づき意思決定できている企業は少ないだろう。理由の一つは過去のデータを十分に活用できていないこと。つまり、予測に使えるレベルのモデル化ができていないことである。もう一つは、ほとんどのBIシステムは自社情報しか集約できていないからである。販売シミュレーションにしても、需要予測にしても、自社の情報だけで見通しが立てられるはずはない。
社外情報を取り込まねば予測はできない
クラウド時代になり、様々な情報がインターネット上で公開され、リアルタイムに利用できるようになってきた。費用はかかるが、大手小売店のPOSデータのような上質な市場環境の情報を入手することもできる。
例えば、ブログ上で自社製品・他社製品がどのように語られているかを整理分析して提供するサービスがある。新製品の売れ行きを予測するのに、先行する価値評価であるブログは有用な情報になりうるはずだ。飲料や季節性食品なら天候に大きく左右されるので、天気予報オンラインサービスを取り込まずして予測できないことは明らかであろう。大きな災害や財政当局の発表があれば、それらが市場にどんなインパクトを与えるか、各種のアナリストレポートがあり、それを予測に活かさない手はない。
これらの社外情報をオンラインで取り込み、自社情報と併せてシミュレーションすることよって、はじめて妥当性のある予測が可能になる。
ただし、社外の情報は、自社データベースに蓄積された数値と異なり、不確実性の高い情報であり、それをどうやってシミュレーションに取り込むかは大きな課題である。市場構造に関する深い洞察力と数理モデル作成力が求められるが、今後のクラウド時代のBIは、社外情報を取り込むシミュレーション型が注目されるであろう。