IE7への期待 〜 IE7がWeb標準を推進する可能性 〜

11月2日、マイクロソフトがInternet Explorer 7 (IE7)の日本語版をリリースした。また、11月11日にはソニーのPLAYSTATION3(PS3)が発売された。いずれも数年ぶりの新製品ということで注目度は高いが、新機能はもちろんのこと、同時にクローズアップされたのが旧バージョンとの互換性である。

PS3の互換性問題

現在、PS3用のゲームタイトル数は非常に少ない。今年中に発売されるタイトル数はわずか10数タイトルであり、そのために5万円以上を支払う消費者は限られる。そのためPS3ではPS/PS2のゲームもプレイできるようになっている。ところが、この互換性が不十分であり800近いタイトルに何らかの不具合が発生するそうである。ソニーは今後、システムアップデートを通じて問題の解消を図ることとしている。

PS3がPS/PS2との互換性を持つ理由はビジネス上の戦略、つまり消費者のPS3への移行を促し囲い込むためである。マイクロソフトのXbox360もXboxのゲームタイトルを再生できるし、任天堂のWiiも同様である。Wiiの場合は任天堂のゲーム機だけでなくメガドライブやPCエンジンにも対応する予定であり、「なつかしのゲームをプレイしたい」という声にも応えている。

ウェブコンテンツの互換性

ウェブコンテンツの互換性については、以前のTakeItEasyでも何度か触れてきた。HTML/XHTML、CSS、ECMA Scriptのような標準があるものの、同じコンテンツを閲覧してもブラウザの種類やバージョンによって見た目や動作が異なるという問題である。その原因は以下の3つに分類されよう。

  • ブラウザの独自機能(Active Xなど)を利用している。
  • ブラウザが標準を無視したり、拡大解釈している。
  • 標準が曖昧なため、ブラウザによって解釈が異なる。

IE7はIE6と比べ、より標準に準拠しているという。Firefox、Opera、Safariといったブラウザはもともと標準への準拠度合いが高い。つまり、2番目の原因によって引き起こされる互換性問題は今後減少していくことが期待される。

その一方で、IE6との間での問題が指摘されつつある。IE6での閲覧を前提としたページがIE7で閲覧できないという問題が発生しているのだ。これまでFirefox等でIE6用のページを見た時に発生したのと同様の問題である。

IE7が与える影響

さて、今回は偶然同時期にPS3とIE7の「互換性」が話題となったため、記事として取り上げた。しかし、PS3とIE7の互換性は同じ「互換性」でもその背景は大きく異なることがわかる。つまり、PS3はソニー製品というクローズドなプラットフォーム上に限った問題であるのに対し、IE7はインターネットというオープンであり、かつ、もはやインフラの一部となったプラットフォーム上の問題なのである。

ソニーはビジネス上の判断によっては、必ずしも過去のゲーム機と100%の互換性を担保する必要は無い。きちんと「互換性には限りがある」ということを示していれば、PS3で動作しないゲームを所有する消費者も「まあ動作しなくても仕方ないか」と思う程度であろう。

マイクロソフトがIE7の開発に当たってとりうる立場は3つあった。IE6との完全互換を実現する、標準に完全に準拠する、標準を尊重するがIE6との互換性も可能な限り維持する、の3つである。結果的にはマイクロソフトは3番目の立場をとった。IE6はブラウザ市場の8割以上を占め、IE6と完全互換をとれば他のブラウザを締め出すことすらできたかもしれないのに、である。さらに、今後IEに特化したサイトが減少すれば他のブラウザに市場を奪われる可能性も高くなる。

インターネットはもはやPCだけのものではない。携帯、ゲーム機、カーナビ、その他あらゆるものからアクセスされるが、それぞれの機器用のコンテンツを準備するのは容易ではない。IEに依存しない、標準準拠のコンテンツは各機器のブラウザで再生することが可能であり、コンテンツ提供側に与えるメリットは大きい。マイクロソフトの真意は定かではないが、IE7が標準を尊重したのは歓迎すべき方向であることは間違いない。あとは肝心なコンテンツであるが、IE7の普及に伴い標準や互換性問題の認知度が上がれば、必然的に「IE6用コンテンツ」が減少し、IE7対応のコンテンツ、そして、「(標準へ準拠した)ウェブコンテンツ」が増加してくれるものと期待したい。