進化するO2O

広がるO2Oプロモーション

2012年にO2Oというキーワードが世の中に現れてから2年近くが経つ。

ご存知の方も多いだろうが、O2Oとは「Online to Offline」の略で、ネットサービス上でスマホ向けにクーポンを配布し、リアルの店舗への集客を図るプロモーションのことをいう。ホームページ上のクーポンページを印刷し、店舗で割引してもらった経験は読者の皆さんにもあるだろう。O2Oは、このような販促施策を、スマホのアプリを介在することでよりスマートにした現代版の「クリック&モルタル」型プロモーションである。

当初のスマホを使ったO2Oは、先進的かつ小規模な取り組みとしての位置づけであったが、スマホの所有率の高まりとともに、最近では、小売の両雄であるイオンセブンHDが、自社のリアル店舗網を活用する本格的なO2Oに乗り出す等、プロモーションの重要な一角を占めるようになってきた。

スマホ向けO2Oサービスの市場規模は2012年の260億円から20年には2,360億円へと9倍に成長するとの予想もあり(シードプランニング社)、今後、スマホを使ったリアル店舗への集客施策は、これまでにない様々なバリエーションを伴って、多く目にするようになるはずだ。

本稿では、O2O関連の目新しいスマホのアプリ事例を紹介する。

ソーシャル雑誌によるO2O

株式会社tabが提供する「tab」は、行ってみたい場所を登録し、他ユーザと共有する、いわば、場所のソーシャル雑誌アプリ(サービス)である。

登録したブックマークはtab帳と呼ばれるグループにまとめることができて、例えば「新宿でしかできない101のこと」「デートで行きたいところ」といった具合にタイトルをつけることができる。tab帳は、検索やレコメンデーションにより他ユーザへ共有される。

実際にtabを使ってみると、企業から直にプロモーションされるO2Oよりも、お仕着せ感が少ないと感じる。街のガイドブックとして、あるいは、デート情報誌として等、より自然な形で、企業のプロモーションがユーザに届くという点で、O2Oの新しい形といえるだろう。

商品起点のソーシャルネットによるO2O

スタートトゥデイ社が提供する「WEAR」は、スマホで実店舗で商品のバーコードをスキャンすることで、スタートトゥデイ社が運営するECサイト(ZOZOTOWN)の商品ページへと飛ぶことができる、リアルからバーチャルへの橋渡しアプリである。

商品ページは、いわば商品を起点としたソーシャルネットであり、商品を買う前に他ユーザとコメントしあったり、商品のコーディネートを、店員を含む他のユーザと共有できる。

衣類を買うのに、友達と一緒にお店を回って品定めをしたり、買った商品についてあれこれおしゃべりをした経験は誰にでもあるだろう。WEARはこうしたコミュニケーションをスマホのアプリ上で演出するという点がO2Oとして新しい。

ディスカウント以外の楽しさを訴求できるか

上記の事例から読み解けるO2Oの大きな潮流は、脱ディスカウントである。

tabは雑誌記事という形で、WEARは友達や店員とおしゃべりができるコミュニティという形で、企業のプロモーションをうまく包み込み、割引クーポンに頼らない、店舗への集客施策を試みている。

O2Oは、スマホというバーチャルとリアルの橋渡しツールを武器にして、どのように、買い物の楽しさを演出できるのか。O2Oの成否はここにかかってくるだろう。