ソーシャルで作って広まるコンテンツの行方

世界中の人々が2010年7月24日に撮影した動画を集め、ドキュメンタリー映画として制作されたLIFE IN A DAYが日本で今年8月に公開される。192か国から約8万本の映画が投稿され、それを1つの映画としてまとめたものである。ソーシャルサービスを通して作り上げるコンテンツとしては、これまでWikipedia等のテキストベースのものが多かったが、音楽や動画といったメディアコンテンツや、広告コンテンツの作成にも広まっている。

映画、音楽、書籍・・・広がるソーシャルコンテンツ

今年7月に第一話が公開されたInsideは、主人公が閉じ込められている部屋から、部屋に設置されているPCを利用して脱出を試みるという映画である。視聴者も主人公を助けるために、TwitterやFacebookを使って主人公にヒントを出すことにより、これらソーシャルメディアを通して映画に参加することができる。

また、複数人がネット上で協力して音楽を作成することができるSNSも試験的に8月に誕生している。利用者が演奏した楽曲をそれぞれアップロードし、他の利用者と重ね合わせることで簡単にバンドを結成することができる。ここで著作権の問題が生じるのではないかと危惧されるところであるが、JASRACから利用許諾を受けているため、JASRACが管理している曲であれば自由に演奏してアップロードすることが可能である。

電子書籍に対して、読者が書籍の各部分に対して感想や関連する写真・動画を貼り付けることができるアプリケーション「SocialBooks」も今年1月に発売が開始された。最初にソーシャル化される本は聖書であり、絵画や動画と共に聖書が表現されるようになる。

これらのサービスは、ユーザがコンテンツ作成に関わることにより、コンテンツに付加価値を与えている。また、コンテンツ作成に関わったユーザは、コンテンツを積極的に知人に広めることに関心を持つと考えられ、口コミを通したコンテンツの普及も期待できる。

広告コンテンツもユーザに間接的に作らせる

従来、広告は企業側が作成し、ユーザはそれを享受するのみであることが多かった。ブログやTwitter等で商品・サービスの評価を行ったり、企業が作成した広告をコピーして拡散したりということに加えて、広告コンテンツ自体もユーザに作成させ、それを広めさせる動機付けに成功している例が誕生している。

mixi上で6月に展開したソーシャルバナー広告は、通常のバナー広告と比べてモバイル版で約16倍のクリック率を達成した。ユーザはNikeの靴のデザインを自由に作成し、それを表示するオリジナルバナーを生成するというものである。そのバナーはmixi上での友人知人が閲覧することができた。

2011年モバイル広告大賞のグランプリを受賞した「今日の西郷どーん」や、マーケティング部門で優秀賞を受賞した「BE Originals campaign」も、Twitterやブログ等によるバイラルの仕組みを積極的に取り入れている。前者は、仮想的なキャラクタである西郷どーんが、拡張現実を利用して九州を縦断するプロジェクトであり、iPhoneを通して西郷どーんを撮影、その目撃写真をTwitter等で共有することができた。後者は、スニーカーを履いた自分の写真をアップロードすることによって自動的にそれに応じた音楽を生成するというものであり、音楽はやはりTwitter等で共有することができる。

いずれも、「自分が作成(撮影)した」という、(広告)コンテンツの内容に独自性があり、単に広告情報のコピーを拡散するだけではないところに特徴がある。

コンテンツを更に広めるために

Twitter等のソーシャルメディアは、リアルタイムな情報共有には適しているが、過去の情報を入手する機会が少ないという課題があった。この機会を増やすサービスとして、Googleが提供するソーシャル検索が、日本でも6月から利用できるようになっている。単にネットワーク上の全ての情報から検索結果を抽出するのではなく、検索者のTwitterやGoogle+上のつながりを元に、検索者の知人がキーワードに関連する情報を発言していた場合はそれを検索結果の上位に表示する。検索結果は広告に限ったものではないが、気になる商品があるときに検索結果に友人の発言が出ていれば、見知らぬ多数の人の意見よりも貴重な情報となり得る。

このように、コンテンツや広告を広めるためには、商品・サービスを知人と共有してもらう仕組みや、商品・サービスに関連する知人の発言を収集する仕組みを構築することがより重要になってきていると言えるだろう。Twitter等のソーシャルメディアは、友人とのコミュニケーションが主要な目的の一つであり、通常のコミュニケーションの延長線上で達成可能な共有の仕組みを考えることが必要である。今回紹介したように、ユーザをコンテンツや広告の作成に参加させることにより、その動機づけを行うことが回答の一つになる。