ユビキタス端末の行方

先日マイクロソフト社から ウルトラモバイルPC(開発コード Origami)が発表された。 開発コード名から推測すると、特にノートPC市場が大きい 日本市場向けを意識したものだろう。 しかし、近年小型のノートPCやPDAの市場は世界的にも 飽和しているのが現状である。 そんな中、ここにきて小型PCやPDAがわずかながら増えているようだ。

スマートフォンの台頭

常に持ち歩くケータイにPC同様の機能が欲しいが、ごく一部の機能があれば十分という人も多い。 PC用のWebブラウザと互換性の高いフルブラウザを内蔵したケータイ端末が 増えていることはそうしたニーズを満たすものである。

一方で、よりPC的なケータイ端末も増えつつある。 小型のフルキーボードが付いており、 端末OS上のアプリケーションを第三者が開発できる端末である。 これらはスマートフォンと呼ばれている。 代表的なOSは、Windows MobileSymbian OS, Linuxである。 有名な製品としては、 BlackBerryTreo がある。 一時PDAの大部分を占めたPalmOSを使ったPDAが縮小するなか、 スマートフォンとして生き残っている。 端末が比較的高価であり、主に海外でビジネス用途に使われている。

国内では、Windows Mobileを搭載したウィルコム社の PHS内蔵の端末W-ZERO3は、 昨年末の発売以降、半年で15万台というPDAしては記録的な売上があった。 ビジネス向けだけではなく、一般消費者も購入しているようだ。 ほかには、SymbianOS上で稼動するM1000 (モトローラ製)やNOKIA製もある。 国内のPDA市場も縮小する中、通信機能を内蔵したことで市場も広がっている。 キャリアが出すインセンティブに後押しされ、 従来のPDAと同程度の価格帯になっているのも大きな魅力だ。

国内外でスマートフォンが流行する理由はどこにあるのだろうか。 メールやWebブラウザを使って、外出先から社内システムにアクセスできれば 十分な業務も多いからである。 これまでは通信速度やパケット料金が普及の妨げになっていたが、 端末に組み込んだデータ通信機能であれば、 通信キャリアにとっても無制限に使われる可能性は低く、定額制を実現できる。 加えて、同一グループ(企業)内での音声通話を無料にするなどの積極的な方策を採用している。

極小PCの行方

スマートフォンでは代替できない機能もあるし、 日常使いなれた環境と同じにしたいという要望もあるだろう。 マイクロソフト社のOrigamiをはじめとして一般のPCの小型化も進んでいる。 90年代後半からB5よりも小さく、数百グラムで、通常のWindowsが動くということで 注目を浴びた小型PCがあった。 東芝リブレットや IBM PC110などである。 しかし、これらは結局限られた場面でしか使われていなかった。 日常的に使うには性能面での不満が大きかったようだ。 そうした経験を生かして、画面のサイズを除けば、 B5サイズのモバイルノートPCと遜色ない性能を持つ 極小型PCが出てきた。

極小型PCの最大の問題は端末価格である。 日常使っているアプリケーションが使える利点が大きいものの スマートフォンが数万円で購入できるのに対し、極小型PCは10〜20万円する。 製品価格が下落傾向にあるB5サイズのモバイルPCに対しても不利である。

ユビキタス端末の将来は

どこでも使えるユビキタス端末としては、 どちらも無線LANやBluetoothの通信を内蔵しており、 公衆回線網に対応しているスマートフォンが一歩リードしている。 10GB程度のHDDが価格下落の激しいフラッシュメモリに置き換えられるようになると、 さらにPCの小型計量化が進む。 そうなると、スマートフォンと極小PCとの差はますます少なくなる。

どちらもアプリケーションの開発環境が提供されており、汎用性という意味では似ている。 充電1回当たりの稼働時間やサイズ・重量といった性能だけではなく、 個人情報保護や不正侵入阻止等のセキュリティ機能で選ばれるのかもしれない。