ユーザ登録してますか

大手電器メーカの石油温風機の事故が社会問題になっている。 回収を始めたものの10年以上前に販売された機器を回収することが難しく、 あまりうまくいっていないようだ。 その原因の一つに購入者が判らないということがある。 ユーザ登録されていれば、状況は違っていたのだろうか。

ユーザ登録を義務付けるには

自分の情報を提示することを嫌がる顧客が多いのも事実だ。現金決済が多い日 本では、その傾向が強いのかもしれない。しかしながら、今回の事件のような 顧客情報が分からないために、事故が発生している事実を考えると、ユーザ登 録を義務付ける方が望ましい。将来サポートやリコールが発生する可能性のあ る商品は、ユーザ登録をしないとアフターサービスが受けられないようにする ことである程度実現可能だ。

自動車の場合には、購入者は必然的にユーザ登録されるため、 リコール制度により設計、製造上の大きな不具合については改善されている。 不具合や過剰な品質にならないように設計されているものの、 経年変化や使用方法に違い等が原因で発生する大きな不具合を直せる可能性がある。 顧客情報を持っていることは企業にとってもリスク軽減につながり、 適当な品質のものを安価で提供できるメリットもある。

ユーザ情報の継続的管理は難しい

ユーザ登録しないと、保証期間を3ヵ月と短くすることで、ユーザに登録を促す製 品もある。特に危険性のない製品に対して、そのように登録を消費者に強制す ることはあまり褒められたものではないだろう。実際にこれらの製品に関しては登録 しなくても通常の保証期間に変更している。

これまで家電製品ではユーザ登録はそれほど積極的に行なわれていなかったのは メーカ系列の販売店から量販店に販売チャネルが代わっていることも大きく影響 影響している。量販店では、独自にポイントカードを使って顧客情報を収集 しているため、ユーザが情報登録する面倒が省けるはずである。 しかしながら、その情報がメーカ側には伝わっていないのが現状である。

中古車やパソコンなどではせっかく購入時に登録されたユーザでも、中古品と して売られてしまうと顧客情報が役に立たなくなってしまう。 中古車の場合には、メーカ系販売店に持ち込んで点検を受けることで、 残りの保証が引き継がれるような仕組みができあがっている。 一方で、中古家電の場合には、1年間の保証期間を過ぎると原則保証がないため 顧客登録されることは少ない。 そこで、 わずかな金額で保証期間を延長できるような仕組みをつくっている販売店もある。

また引越し等でユーザの情報が変更されても、情報が更新されることはほとんどない。 個人情報を更新するメリットが少なく、手間がかかるからである。 更新したユーザにメリットがあればよい。実際、販売店ではポイントを提供したり、 キャンペーンをしている。また、ネットワークにつながる機器では 自動的に登録・更新が行えるなどの仕組みを用意すれば、手間は少ない。

ユビキタス時代では

ユーザ登録することは管理のためだけではない。情報を登録することで量販店 のポイントなどより大きな便益が得られている。さらに、あらゆるモノにコン ピューティング機能が組み込まれ、ネットワークに接続されるユビキタス時代 には、個人情報を登録するメリットも大きくなる。例えば、「今だけ」「ここ だけ」「あなただけ」といったユーザの意図に応じたサービスが提供されると いった機能も考えられている。 本来ユーザ登録は、消費者にとっても企業にとってもメリットが大きいはずで あり、今後より広く義務付けられてもいいのではないだろうか。