つながず使える携帯電話の配慮を

携帯電話の高機能化・多機能化はとどまることを知らない。 デジカメをはじめとして、ゲーム機、ラジオ、テレビとその場に応じてさまざまに姿を変えながら、 我々の生活必需品、いや日常必携品となりつつある。 しかし、いざ使いたいと思っても使えない場合がある。

航空機内では常に使えなくなった

今年1月15日に施行された改正航空法により、 航空機内では一切携帯電話を使えなくなった。 より正確に言うならば、 常に電源を切ることが義務付けられるようになったのである。 普段、携帯電話を腕時計代わりに使っている身としては、 出張時はいささか不便になり困っている。 ふと思いついたアイデアのメモ帳代わり、 あるいは自分のスケジュール帳代わりとして携帯電話を使っている人は、 なおさらではないだろうか。

恥ずかしながらつい先日知ったのだが、 最近の一部の携帯電話は電源ONでも電波を発信しない状態にして使えるようになっているらしい。 呼び方は各携帯電話キャリアによって異なり、NTT DoCoMoでは「セルフモード」、 auでは「電波OFFモード」、vodafoneでは「オフラインモード」と呼ばれる。 (今後これらを総称してセルフモードと呼ぶ。) 現状ではたとえセルフモードにしても航空機内で使えないようだが、 電波を発信しない状態なのだから、 せめて離着陸時以外はきちんと使えるように配慮して欲しいものである。

セルフモードをより使いやすくするには

実際は利用者の多くがセルフモードを使っていないと思う。 通話・通信できてこそ携帯電話という理由もあるだろうが、 セルフモード自体が使いにくいというのもその一因だろう。 それではより使いやすくするにはどうすればよいだろうか。

まず傍から見てセルフモードであることが一目でわからなければならない。 病院や優先席付近で携帯電話を使っていても、見咎められないようにするためである。 例えばLEDや内蔵のフラッシュを弱く一定のパターンで点滅させればわかりやすい。 実はこの機能も一部の機種ではすでに備えているようだが、 広く普及させるためには全キャリアの多くの端末で、 点滅の仕様を統一する必要がある。

次に望まれるのは、楽にモード切り替えできるようにすることである。 筆者の使っているP504iという機種では、「セキュリティ」メニューを選ぶとセルフモードの切り替えメニューが現れるが、これではわかりづらく使いにくい。 誤操作により知らずに電話が受けられなくなる虞はあるが、 マナーモードのようにワンタッチで切り替えできると便利になるに違いない。 あるいは携帯電話の利用を禁止されている場所では、 外部から強制的にモードを切り替えてしまい、 数分後に復帰する(または再びセルフモードに設定する)ような操作ができれば、 利用者は特に意識する必要がなくなる。 航空機搭乗時や病院内は是非このような設備を導入すべきである。

さらに電話やメールを受けられない不便さを補えるとありがたい。 つまりセルフモードの時にかかってきた電話の発信元や届いたメールをセンター側で保存しておき、 通話・通信可能モードに切り替えた際にそれを伝えてくれると便利である。 auでは昨年7月から、電源OFFや圏外から復帰した際に通知してくれる「お留守番サービス」を無料で実施しているようだが、 他のキャリアでも同様のサービスを期待したい。

通話料・通信料以外で稼ぐビジネスモデル

しかしセルフモードで使われる時間が長くなればなるほど、 キャリアとしては困ってしまう。 なぜなら通話料・通信料という最も基本的な収入源が揺らいでしまうためだ。 1契約当たりの月間平均収入(ARPU)は伸び悩んでいる状況であり、 さまざまな割引サービスや定額制導入でさらに厳しい価格競争をしている状況なのだから、 各社ともセルフモードの利用をアピールするわけにはいかないだろう。

たとえ魅力あるコンテンツを豊富に用意できたとしても、 もはや通話料・通信料のみで稼ぐビジネスモデルは難しい。 これだけ端末が高機能化しているのだから、 携帯電話を何らかのデバイスとして使い、 その付加価値で収入を得るビジネスモデルの検討が必要ではないだろうか。

例えば携帯電話をカードリーダとして扱うことを考える。 読み込ませるカードにゲーム性やコレクション性を持たせて、 カードの大量販売で収入を得るモデルである。 あるいはPCの外付けデバイスとしての可能性を考える。 PDAのように充電スタンドにUSB端子を付け、 USB経由でデータを送受信してモバイルビューアとして使えれば良い。 この場合の課金は送受信回数に比例して低価格に設定し、 携帯電話上で確認できるようにすれば、 大量のパケット送受信による予想外の通信課金(いわゆるパケ死)も防げるようになるだろう。

セルフモードを乱用しないで

通話・通信ができてこそ携帯電話であるという意見はもっともだが、 セルフモードも使い分ければそれなりに便利な機能である。 端末本体の多機能化・高機能化が進む今後は、 さらに重要な役割を果たすようになるだろう。 しかし電話に出たくないからという理由でセルフモードを使われてしまうのは困りものだ。 外出が多く電話でしか連絡が取れない人には特に気をつけて使ってもらいたいものである。