情報リテラシー教育の未来〜ハイブリッド水族館の試み〜

最近の子どもたちは、ゲーム機やパソコンをいとも簡単に使いこなしてしまう。生まれたときから身の回りにあったのだから当然といえば当然だが、逆に大人が使い方を教えてもらうくらいである。 さらに、2001年までに、全国の公立学校をインターネット接続するという計画が進められている。現在でもインターネットに接続されている学校はいくつかあるが、その回線速度も格段に向上させ、しかも全校を接続しようというのだ。ただし、パソコンを使える教員が足りない、提供すべきコンテンツがない、という問題も抱えている。

コンテンツをどのように提供するか

このように機器の使い方を身につけ環境が整ってくると、それらを基にして「何をどう扱うの?」ということが気になってくる。たとえどんなに面白い内容でも、CD-ROMで提供したりインターネット経由で配信したりする形態では、単にメディアが変わっただけで面白くない。では、どうするか? 例えば、ネットワーク上の世界と実世界を組み合わせて、つながりを持たせて提供できれば面白いはずだ。

そこで実際に実験してみたのが、葛西臨海水族園での「ハイブリッド水族館」の実験である。詳細は取り上げて頂いたニュース記事に任せるが、実際に利用するとこのような感じである。

僕は最近インターネットに興味を持ち始めた高校2年生だ。この間、先生から「インターネットを利用したハイブリッド水族館という実験に参加してみないか?」と誘われ、ちょっと気になったので水族園に行ってみた。 行ってまず手渡されたのは、ノートパソコンとヘッドフォンだった。重いし、コードぐちゃぐちゃだし、面倒だなぁと思いながらサメを見に行くと、「この水槽にいるサメを見てください。頭の形が変わっているでしょう?」という声が、いきなりヘッドフォンから聞こえてきた。驚いてノートパソコンを見ると、そこにはお坊さんが鐘をたたいている絵が映っていた。
お坊さんが鐘をたたいている絵観察している絵

ふーん、声と絵で説明してくれるのか。水槽の前に立つと自動的に説明が始まるってことは、近くに何か仕掛けがあるんだろう。 水槽の前で説明が聞けるのはよかったけど、重いノートパソコンを持って見て回るのは疲れたので、もっと軽いものにしてほしいなぁ。

学校に戻ってから水族園のホームページにアクセスして、自分のパスワードを入れてみると、自分が水族園で何時にどの水槽を見たのかがわかるようになっていた。

復習ページ

ホームページを見ていると、『確かにこのサメの頭は変だった』『そういえばこんな魚もいたなぁ』と水族園での様子がよみがえってきた。また、『え、うそ? こんな魚もいたっけ?』と改めて気が付くこともあった。「ハイブリッド」って、水族園で見たものが家からインターネット経由で見られるからなのかな? このホームページはちょっと重いけど、自分のページができるというのは面白いと思った。

今後は一人一人に則した情報提供を!

携帯端末を使って一人一人に情報提供するという試みは、国立民俗学博物館の電子ガイドや鳥羽水族館の超水族館でも既に実施されている。ただし、これらは主に施設内での利用を目的としている。 また、今まで学校でのパソコンやインターネットの使い方といえば、施設と学校あるいは学校同士をリアルタイムにつないだ、いわゆる遠隔授業や交流学習といった形が主流であった。これは、回線速度に余裕がない、あるいは一人で1台のパソコンを使えない、などの理由もある。しかし、今後総合的な学習の時間が増え、さらに回線速度やパソコン環境が充実していけば、ハイブリッド水族館のように一人一人に違った情報を提供するという使い方が主流となっていくに違いない。