インターネットはどれくらい速ければ満足できるのか

インターネットが遅くてイライラするという話をよく聞く。 確かにその通り。最近は、やたらと画像を張りつけた重いページばかりだし、 ソフトウェアをアップデートしようとすれば数メガバイトのサービスパックを ダウンロードしなればならなかったりする。 ほとんどのユーザはNTTのアナログ電話回線かISDNに頼るしかないのだから。 せいぜい50〜60Kbps(キロビット/秒)の細い回線では、 とても快適なネットサーフィンという訳にはいかない。

満足できる回線速度は?

どれくらいの回線速度があれば満足できるのだろうか? よく回線速度を表すときに「新聞XXページを一秒で送れる速度です」などと書いてある。 そもそも新聞1ページは何ビットなのだろう。 真偽はさだかでないのだけれど、256キロビットという説がある。 1日40ページで10メガビット、一年で4ギガバイトというところか。 インターネットで新聞を読む訳ではないので、ピンとこない。

やはりホームページで考えてみよう。 私がよくアクセスする Hot Wired Japan のホームページは128KB(キロバイト)であった。 朝日新聞のホームページは104KBだ。 およそ100KB、つまり800Kビットとしても、50Kbpsの回線では15秒以上はかかってしまう。 やはり、2秒位で表示して欲しいものだ。 すると、500kbps位あればストレスがずいぶん少なくなる計算だ。

これからのインターネットはマルチメディアの鍵になる。 市販の ISDNテレビ電話は128kbpsあれば一応利用できるが、 これはほとんどパラパラマンガなので、あまり使えない。 ISDNを3本束ねた384kbpsのテレビ会議システムなら、低解像度だが十分きれいな画像で話ができる。

ハードディスクにテレビ録画できる 新型VAIOに搭載されたのがMPEG-2方式だ。 約4Mbpsでテレビ品質の映像を送ることができる。 すでに一部のケーブルテレビ局では実際の放送に使っている。 さらに、30Mbpsあれば、ハイビジョンサイズの映像もいける。 ネットワーク対応のMPEG-2ボードやカードもあるので、 回線さえ速くなればすぐにでも使えるのだが。

有望な4つの高速インターネット接続

とすると、最低でも500kbps、できれば1Mbpsは欲しいところだ。 テレビ放送レベルを望むなら4Mbpsが最低条件になる。 どうすれば一般ユーザが速い回線を手に入れられるだろうか。 幸いNTTに頼らなくても、いくつかの方法がある。

昨年あたりからケーブルテレビ局がプロバイダになる ケーブルインターネット が始まっている。 既に放送用の太い回線があるので初期費用も安く、 月額5000円前後と比較的安いのも魅力だ。スピードも最大10Mbpsと十分に速い。 集合住宅(=マンション)に対応していないとか、問題もあるのだけれど、 高速インターネット接続の本命ではないか。

これに対抗するのが、ADSLというNTTの電話線をフルに活用する方法だ。 同じ電話線を使うのに、500kbps〜1.5Mbpsで接続できるようになる。 一部の地域で始まっているので、来年には広く使えるようになるだろう。

もう一つの注目株が衛星インターネットだ。 インターネットが遅いのは、もっぱら受信するときの話で、 送信するデータは少ないのであまり速度は気にならない。 そこで、受信のときだけ、CS放送の通信衛星からデータを送ってもらうサービスが始まった。 ケーブルと同じく元々は放送用だが、最大1Mbps位のようだ。

最後に、ここ数ヵ月でにわかに現実味を帯びてきたのが、 無線インターネットだ。 携帯電話のように町中にアンテナを立てて、そこから無線で家庭に接続する方式である。 6〜50Mbpsという話なので、実は一番期待できるのではないだろうか。

インターネットが速くなるとどうなる

インターネット回線が速くなると、ホームページがパッと表示されたり、 映像がリアルタイムにダウンロードできるようになる。 これは確かにそうなのだが、もっと本質的に仕事も生活も変わるのだ。 インターネットのおかげで、 FAXは電子メールにとって替わられ、FAXはあまり使わなくなってしまった。 ホームページがあるので、ショーに出かけてカタログを集めることはしなくなったし、 キオスクでスポーツ新聞も買わなくなってしまった。 おそらく、数年後にはビデオや音楽もインターネットで配信されるようになり、 レンタルビデオもいらないだろうし、CDもレコード屋から買わなくて済みそうだ。

もっとも、ここまでは今見えている話である。多分、その先が面白い。 ペットロボットはインターネットを通じて勝手におしゃべりを始めるかもしれない。 「あれ探しておいて」とか「今日は何食べようか」と話かければ、 インターネットで見つけてきてくれそうだ。 ペットロボット同士がネットで友達探して遊んできて、 飼い主に報告してくれれば、それも楽しそうだ。 逆に、そこら中にあるネットワークカメラがどこからでも見られるようになれば、 いつでも見られている嫌な社会になるような予感もする。 インターネットが速くなるとどうなるか、もう少し考えてみたくなってきた。

  • NTTのISDNテレビ電話 Phoenix miniは手軽に使える低価格テレビ電話だが、 かなり画質は悪い。
  • SONYのテレビ会議システムPCS-1500や、 最大手ピクチャーテル社の SwiftSiteは、 最大3本のISDNを束ねて、高画質の画像を送ることができる。